No.2012-18
2012年4月30日〜2012年5月6日
この週のニュース
◆トピックス 2本 ◆ミニニュース 1本 ◆お知らせ 2本

世界初、電子スピンの共鳴運動を電圧で制御
:産業技術総合研究所/大阪大学
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(独)産業技術総合研究所は4月30日、大阪大学の研究グループと共同で電子の磁気的な性質であるスピンの共鳴運動を、世界で初めて電圧で制御するのに成功したと発表した。一般的な鉄コバルト合金を数原子の厚さまで超薄膜化、そこに絶縁体を介して高周波電圧を加えることで実現した。電子のスピンを用いた超低消費電力デバイスの新しい基盤技術として今後の応用が期待される。
電子の持つ磁石のような性質を利用する「スピントロニクス」での重要な基盤技術に、スピンの集団運動といえる「強磁性共鳴」がある。振り子の共振のように、磁石のスピンについても、固有の周波数に同調した入力を行うと、小さなエネルギーで効率のよい運動制御ができるということで、これまで電流や磁界などを使った種々の手法で制御が行われてきた。しかし、いずれも大きな電流が必要で、この電流によって発生するジュール熱が問題になっていた。このエネルギー損失を避けるため、いろいろ試みられてきたが、実際のデバイスで求められる条件を全て満たす方法は見つかっていなかった。
産総研と阪大の研究グループは近年、鉄についてスピンの特定方向への向きやすさが電圧で制御できることを発見。通常は、金属材料に電圧を加えても、金属に含まれている電子数が多いので、その効果が隠されているが、金属の厚さを数原子分ほどに薄くすれば、効果が見えてくる。そこで、鉄コバルト合金の超薄膜磁石/酸化マグネシウムの絶縁層/鉄の対向電極を重ねた素子を作り、超薄膜磁石のスピン共鳴周波数に一致する高周波電圧を加える手法を行った。
その結果、外部から加えた静磁界の周りを回転するコマの首振り運動のようなスピンの共鳴運動を起こさせるのに成功した。このようなスピン共鳴運動の制御は、磁石材料の種類や温度に関わらず世界で初めてで、従来の電流駆動型制御と比較して200分の1以下に低消費電力化できることも確認した。
この研究は、科学技術振興機構の課題達成型基礎研究の一環として行われた。
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電圧によるスピンの共鳴運動制御の概念図(提供:産業技術総合研究所) |
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固体電気化学反応を原子レベルで初めて観察
:物質・材料研究機構/アーヘン工科大学/ユーリッヒ研究所
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(独)物質・材料研究機構は4月30日、ドイツのアーヘン工科大学、ユーリッヒ研究所の研究グループなどと共同で、固体電気化学反応での電子の授受や金属イオンの還元・析出を原子レベルで観察することに成功したと発表した。化学反応式からは読み取れない様々な反応現象を視覚的にとらえることを可能にした成果で、固体電気化学反応を利用している燃料電池やガスセンサーなどの高性能化に有用な指針を提供できそうだという。
固体電気化学反応は、イオン伝導体中のイオンが還元されて中性の原子となって析出する「還元反応」と、析出した原子がイオン化されてイオン伝導体中に取り込まれる「酸化反応」を指し、近年、燃料電池やガスセンサーの電極反応などに幅広く利用されている。
物材機構の研究チームは、今回この反応の観察に、原子レベルで物質を観察できる走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いた。固体電気化学反応の仲立ちをするイオン伝導体は、電子伝導性がないので、微弱な電流を必要とするSTMではこれまで、イオン伝導体の観察はできなかった。
それに対し研究チームは、イオン伝導体であるヨウ化ルビジウム銀に、ごく少量の鉄を加えることにより、イオン伝導体の特性を損ねることなく電子伝導性を持たせることに成功した。この結果、イオン伝導体のSTM観察が可能になり、固体電気化学反応に必要な電子の授受と、それに伴う金属イオンの還元・析出反応の観察が実現した。
観察の結果、固体電気化学反応では、電圧印加後、金属イオンの還元・析出反応が始まるまでに一定の時間を要すること、また、ある値以上の電圧を印加するとその時間が無視できるほど小さくなることなどが明らかになったという。
開発した観察手法は、固体電気化学反応全般に適用できるため、この反応を利用した各種の技術・製品の高効率化などが期待できるとしている。
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走査型トンネル顕微鏡がとらえた固体電気化学反応で形成されたクラスター。(a)は、クラスター形成前の表面。(b)は、クラスター形成後の表面(提供:物質・材料研究機構) |
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