共同研究で開発に成功した、蛍光タンパク質を組み込んだ光るトレニア(提供:花き研究所)
(独)農業・食品産業技術総合研究機構の花き研究所は9月5日、NECソフト(株)などと共同で、観賞用に広く栽培されている草花のトレニアに「光る花」を咲かせることに成功したと発表した。海洋プランクトンから発見された蛍光タンパク質を遺伝子組み換えで植物体内に導入、目で見てわかるほど強い蛍光を発する花を初めて実現した。花卉(かき)市場向けに実用化できるほか、植物の遺伝子の働きを調べる研究用に使えるという。同研究所とNECソフトのほか、(株)インプランタイノベーションズ、奈良先端科学技術大学院大学が共同で開発に取り組んだ。
■研究用や観賞用などに実用化も
トレニアは一般に紫色や白などカラフルな花をつける品種が知られており、暑さに強い夏の草花として広く普及している。今回、このトレニアに自ら発光する能力を持つ海洋プランクトンの一種「キリディウス属」から発見された新しい蛍光タンパク質の遺伝子を組み込んだ。
その結果、暗闇で特定の波長の光を当てると、鮮やかな黄緑色の蛍光を発する花を咲かせることに成功した。特に今回は、蛍光タンパク質を細胞内に多量に蓄積させるための技術と組み合わせたことで、目で確認できるほど強い蛍光を発する花が実現できた。
花卉市場では、イベント用や贈答用に蛍光塗料を塗布したり吸収させたりして光る花を商品化する例はあったが、植物自体の特性として発光するものはなかった。これまでも他の研究グループによって、クラゲの発光タンパク質などを組み込んで花を光らせる試みはあったが、目で確認できるほど明るい光を発する植物は実現が困難だった。
研究グループは今後、植物体内で蛍光タンパク質が活性を維持し続ける方法や、光る花の観察・展示法などについて研究を進める。