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ここに注目!

化石燃料時代の「終わりの始まり」示したCOP28(毎日新聞社 大場 あい)

(2024年2月15日)

 世界気象機関(WMO)によると、昨年の世界の平均気温は産業革命前より1.45℃高く、観測史上最高となりました。国際社会が掲げる「1.5℃に抑える」という目標に迫る水準です。

 人間活動が原因の地球温暖化が一因で、国連のグテーレス事務総長が7月下旬の記者会見で発した「地球沸騰化(ちきゅうふっとうか、’era of global boiling’)」という言葉は、一気に世界中に広まりました。日本も昨年は記録ずくめの非常に暑い夏でした。

 この危機的状況をどう変えていくか。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで昨年11~12月に開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は、現在進む温暖化の最大の原因・化石燃料使用の方向性が最大の焦点となりました。

 気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」では、途上国を含む全ての国に温室効果ガス排出削減目標の策定や対策実施を義務づけています。ただし、どんな方法で削減するかは各国に委(ゆだ)ねられており、かつては具体的な削減手段をCOPで合意することは想定されていませんでした。

 ところが2021年、英国グラスゴーで開催されたCOP26で「排出削減対策が取られていない石炭火力発電の段階的削減」に190以上の締約国・地域が初めて合意。その後、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う世界的なエネルギー危機で、化石燃料回帰の動きがありながらも、化石燃料全体に網をかける必要性が強く認識されるようになっていました。

 とはいえ、日本もいまだ石炭火力発電に依存しており、途上国のエネルギー需要も増す中で化石燃料の削減や廃止に世界が合意するのは簡単ではありません。また、COP28は産油国での開催、議長のジャーベルUAE産業・先端技術相は国営石油企業のトップも務めており、踏み込んだ合意ができるか、懐疑的な見方もありました。

 欧米各国や島嶼国(とうしょこく、主に島々から成り大陸から距離がある途上国)など100以上の国・地域が化石燃料を「段階的廃止(Phase out)」とすることに賛同したものの、産油国の強い反対で決定文書にこの表現は盛り込まれませんでした。ただし、発電などエネルギー分野について「Transitioning away from fossil fuels」との文言で合意しました。日本では「脱化石燃料化」、「化石燃料からの脱却」などと報じられました。190カ国・地域が参加する同条約の下でこうした方向性で合意に至ったのは初めてです。

 「化石燃料からの移行」と訳される場合もありますが、合意した文言化石燃料の使用量をゆるゆると減らしていけばいいという意味ではありません。「この重要な10年に行動を加速」「2050年に実質ゼロを達成」などの前提条件がついており、早急な脱化石燃料化が求められます。同条約のサイモン・スティル事務局長はCOP28閉幕に際し、「この結果は(化石燃料時代の)終わりの始まりだ」と呼びかけました。

 高温傾向は今年に入っても続き、欧州連合(EU)の「コペルニクス気候変動サービス」は今月、2023年2月~2024年1月の世界の平均気温は産業革命前の水準を1.52℃上回り、「最も暑い12カ月」になったと発表しました。これだけを持って「1.5℃目標は達成不可能」とは言えませんが、限りなく難しい状況でしょう。

 日本も毎年のように温暖化の影響が指摘される豪雨(ごうう)、猛暑(もうしょ)に見舞われています。被害の深刻化、COP28の決定を踏まえれば、脱炭素化の加速は必須です。2024年はエネルギー基本計画改定の議論が本格化しますが、向かうべき方向を見失わないよう、議論を注視していく必要があります。

 

国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の最終盤、会場内で「化石燃料の段階的廃止」に合意するよう訴えるNGOのメンバーら=アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで2023年12月13日(Photo by COP28 / Andrea DiCenzo)

 

大場あい(おおば・あい)
2003年毎日新聞社入社。山形支局、科学環境部、つくば支局などを経て、2023年4月からくらし科学科学環境部に在籍。2018年度から気候変動影響や適応策に関するキャンペーン「+2℃の世界」を担当した。