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宇宙誕生6億年後の星雲―巨大な“空洞”構造:国立天文台/名古屋大学/筑波大学

(2023年7月14日発表)

 名古屋大学と筑波大学らは7月14日、138億年前に誕生してからわずか6億年後の若い宇宙の姿をこれまでにない高い解像度で捉えたと発表した。国際協力で南米チリに作られた巨大電波望遠鏡「アルマ」で、活発な星の誕生や超新星爆発でできた巨大な空洞「スーパーバブル」とみられる構造も観測した。宇宙誕生初期の星の生死にかかわる星雲の姿をこれだけ詳細にとらえたのは初めて。銀河誕生の重要な手掛かりが得られるとしている。

 アルマ望遠鏡はチリ北部にあるアタカマ砂漠の標高5,000mの高地に国立天文台など世界16か国の研究施設が協力して設置・運用する電波望遠鏡。口径12mと7mのパラボラアンテナ66台を山手線の内側ほどの広さに展開・連結して口径16㎞の一つの巨大な電波望遠鏡として用い、従来にない高解像度で誕生間もない宇宙の姿を観測できる。

 今回、このアルマで宇宙誕生から6億年後の姿を見せる132億光年かなたにある銀河「MACS0416_Y1」を観測、そのデータを詳しく解析した。その結果、これまで見分けられなかった初期宇宙に漂う塵による「暗黒星雲」と、酸素の集まりである「散光星雲」が出す電波が、それぞれ別の場所から出ていることが分かった。

 暗黒星雲と散光星雲が互いに避け合うように入り組んで分布していたことから、研究グループは「暗黒星雲の内部で誕生した星が、周りのガスをイオン化して散光星雲に変えている様子が見て取れる」と話している。

 また、この銀河「MACS0416_Y1」は過去数百万年にわたって、私たちの天の川銀河の約100倍の速さで星を生み出してきたことが知られている。今回得られた塵の分布からはこの銀河の中央に直径約千光年もの巨大な空洞が見られたが、これは次々に生み出された星が短命のうちに超新星爆発を起こし、その衝撃で作られた巨大な空洞「スーパーバブル」であるとみている。

 今回の成果について、研究グループは「宇宙早期の銀河の成り立ちや星々の生死、宇宙の物質循環の理解につながる」と話している。

人類史上最遠方の暗黒星雲をもつ132億光年遠方の銀河MACS0416_Y1の画像。画像は一辺およそ1万5千光年。(左)アルマ望遠鏡がとらえた暗黒星雲(塵が放つ電波)と散光星雲(酸素が放つ電波)、およびハッブル宇宙望遠鏡の星々の画像。Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Y. Tamura et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope (右)暗黒星雲がもつ塵が放つ電波をとらえたアルマ望遠鏡の画像。中央部に縦方向に伸びた楕円形の空洞「スーパーバブル」が見える。Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Y. Tamura et al.