これが“夢のスイッチ”―脳の神経細胞を特定:東京大学/筑波大学
(2025年6月23日発表)
東京大学と筑波大学は6月23日、夢を見ているときの脳の活動状態「レム睡眠」に入るスイッチ役の神経細胞(ニューロン)を突き止めたと発表した。呼吸や血圧の調節など生きるのに欠かせない働きをする脳幹にレム睡眠に入る直前から活動を始める神経細胞が存在することを、マウスによる動物実験で明らかにした。”夢のスイッチ役”が特定できたとして、パーキンソン病などレム睡眠の異常を伴う病気の理解につながると期待している。
夢をよく見る睡眠状態として知られるレム睡眠では、その開始直前から終了時までずっと活動し続ける神経細胞が脳幹の一部に存在することは数十年前からよく知られていた。ただ、「レム-onニューロン」と名付けられたこれら一群の神経細胞の正体は、これまでよくわからなかった。
研究グループは今回、神経細胞の活動を一細胞ずつ記録できる最新技術を用いて、レム-onニューロンの中で具体的にどの神経細胞が”夢のスイッチ役”を果たしているかをマウスによる動物実験で詳しく調べた。
対象にしたのは、これまでの研究でレム睡眠の開始や維持に特に重要な働きをすることがわかっていた「CRHBP陽性ニューロン」という細胞群。その活動を一細胞ずつ記録できる「オプト・タギング法」と呼ばれる最新技術を用いて詳しく調べたところ、その多くがレム睡眠時に活動し続けるレム-onニューロンと同じ活動パターンを示すことがわかった。
この結果から、研究グループは「長年正体不明だった夢見るスイッチに相当するニューロンの実態が初めて明らかになり、それが実際にレム睡眠の制御に関わっていることが実証された」としている。将来的にはパーキンソン病などレム睡眠の異常が関わる病気の予防や治療にもつながると期待している。