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原始銀河団のコア領域を観測し“環境効果”捉える―銀河同士がより多く密集した環境で銀河は急速に成長:筑波大学ほか

(2023年9月15日発表)

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(左)ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とアルマ望遠鏡で調べた原始銀河団 A2744ODz7p9 の中でも銀河の密集した「大都市圏」の想像図。(右)「大都市圏」の未来予想図(数千万年後の姿)。(© 国立天文台)

 筑波大学とスペイン宇宙生物学センター、早稲田大学、名古屋大学などの研究者から成る国際研究チームは9月15日、131.4億光年かなたにある最も遠い原始銀河団の中で、大都市圏のように銀河が特に密集している「コア領域」を観測することに成功、多くの銀河が狭い領域に集まることで銀河の成長が急速に進んでいることを捉えたと発表した。

 銀河がお互いの重力で集まった集団を銀河団といい、銀河団の祖先を原始銀河団と呼んでいる。銀河団は宇宙における最も大きな構造の一つで、地球に比較的近い銀河の観測から、銀河同士がより多く密集した環境の方が、個々の星の生死のサイクルが急速に進むことが知られている。これは“環境効果”と呼ばれているが、環境効果には未知な面があり、この解明には宇宙が誕生して間もないころの原始銀河団の観測が必要とされていた。

 国際チームは今回、NASAなどが2021年に打ち上げた宇宙に浮かぶ赤外観測用のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)と、チリの標高5,000mの地点に建設された電波観測用のアルマ望遠鏡を用いて、原始銀河団「A2744z7p9OD」のコア領域を調べた。

 まず、JWSTによる高い分解能での観測により、電離した酸素イオンの光を4つの銀河から検出、この光の赤方偏移から、4つの銀河の地球からの距離を131.4億光年と同定した。

 次に、アルマ望遠鏡による観測で以前取得された塵が出す電波に注目し、観測データを解析したところ、4つの銀河のうちの3つから、塵(ちり)の出す電波を検出した。銀河の中の塵は、銀河を構成している重い星々がその進化段階の終末期に引き起こす超新星爆発により供給され、それが新しい星の材料になると考えられている。

 このため、銀河に多量の塵があることは、銀河内の第1世代の星の多くが既に一生を終えており、銀河の成長が進んでいることを示している。「138億年前の宇宙誕生からわずか7億年余りの時代に“環境効果”が存在していたと考えられる」という。

 さらに、コア領域に密集した4つの銀河がどのように形成され、進化するのかを理論的に検証するため、銀河形成シミュレーションを活用して大都市圏の将来の姿を予想した。その結果、数千万年以内に大都市圏が1つのより大きな銀河になることが予測されたという。