温暖化に強い家具用樹種は?―インド南部のチーク:筑波大学ほか
(2025年7月4日発表)
温暖化などの気候変動に一番適応力があるのはインド南部の樹木。筑波大学と(国)国際農林水産業研究センターの研究グループは7月4日、インドから東南アジアにかけて広く植林されている「チーク」の環境変動に対する適応力についての研究結果を発表した。家具材などに広く使われ、森林経営上も極めて重要とされるチークの資源管理を、今後どう進めていくかを判断するのに役立つとしている。
チークは古くから利用されており、現在では世界の約65カ国で植林されている。ただ、世界的に気温の上昇や降水パターンの変化といった気候変動が進む中で、光合成の抑制や乾燥ストレスなどで枯死につながるおそれもある。
そこで研究グループは、ジャワ島の国際産地試験林などで栽培されている各地域のチークを対象に、遺伝情報を詳しく解析した。具体的には、遺伝情報としてDNA上に記録されている塩基と呼ばれる4種類の物質の配列のうち、一つの塩基だけが他の塩基に置き換わった一塩基多型を調べた。
その結果、インド南部を原産地とするチーク集団が他の地域の集団に比べ遺伝的な変異が最も大きいことがわかった。さらに、地域別に一塩基多型を詳しく解析したところ、地域の温度、特に雨季の平均気温と強く関連しているとみられる多型が多数見つかった。
そこで、これら一塩基多型を持つチークの気温と降水量に対する適応性についてさらに詳しく調べたところ、インド南部と北部、ラオス北部のチーク集団がこれらの変化に対する適応性が高いことが示唆された。特に、遺伝的変化が大きかったインド南部のチーク集団は、環境変動に対する高い適応性を持っていることが分かった。
一方、インド北部とラオス北部は気候変動による気温や降水量の変化がインド南部など他の地域より小さいと考えられ、気候変動の影響は受けにくいとみられた。そのため、研究グループは「遺伝的な適応性が過大評価された可能性もある」とみている。
今回の研究では、環境情報として気温と降水量だけ用いており、土壌条件などは考慮していない。そのため、今後は「他の環境情報も利用してチークの包括的な環境適応性を明らかにしていきたい」と、研究グループは話している。