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ハチの一種タマバチの新種を発見―ネイチャーが注目、国際科学誌に掲載:国立科学博物館ほか

(2023年11月2日発表)

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カシワハスズタマバチ。成虫は翅が無く、アリのよう。幼虫室は取り除いている。(©国立科学博物館)

 (独)国立科学博物館と(国)森林総合研究所の共同研究グループは11月2日、”鈴”のような不思議な構造の「虫こぶ」をつくるタマバチと呼ばれるハチの新種を岡山県で発見したと発表した。柏(かしわ)の木の葉の上で見つけたもので、虫こぶの内部構造もマイクロCT(X線マイクロコンピューター断層撮影)を使い非破壊で解明した。この研究成果は、ネイチャー・リサーチ社が刊行する国際科学誌「Scientific Reports」に10月30日掲載された。

 虫こぶは、昆虫の刺激で植物の葉や枝などにできるこぶ状の組織。その形状は、昆虫の種類ごとに異なり、内部にいたるまで驚くほど変化に富んでいるといわれている。

 このため、その複雑な形状にはどのような働きが隠れているのかという関心が昆虫学者をはじめ、生物学者、植物生理学者、物理工学者など様々な分野の研究者の間で高まっている。

 中でもタマバチは、複雑に発達した虫こぶを形成する代表的な昆虫として知られており、虫こぶの内部には幼虫室と呼ばれる幼虫が暮らす部屋が固定されている体長が1~6mmほどの小さなハチ。世界でこれまでに約1,400種、日本では約80種ほど見つかっている。

 そのタマバチは、いろいろな形の虫こぶをつくるが、研究グループは国内調査を進めていく中で、今回岡山県北部の柏の葉で見慣れない直径が1cmほどの球状の虫こぶをつくる翅(はね)の無いタマバチを見つけた。

 そして、その丸い虫こぶは、薄く硬い外壁に守られていて卓球のボールのように中空で、空洞の中には丸い小さな幼虫室が固定されずに転がっているという珍しい構造になっており、ちょうど1cm大の鈴のようだった。

a. カシワハスズタマフシ(虫こぶの名称)の断面。下に転がる白い球が幼虫室。
b. マイクロCTによって観察されたカシワハスズタマフシの内部構造の変化。 (左)8月30日、(右)9月26日
(©国立科学博物館)

 研究グループは「このような虫こぶは、海外のタマバチの虫こぶで数例の報告があるものの、国内では記録がない」と言っている。

 採集した虫こぶから成虫を得て、体の特徴やDNA(デオキシリボ核酸)を調べた結果、既存の種ではない新種のタマバチを発見したことが判明、学名を「Belizinella volutum(ベリジネラ・ボルツム)、和名を虫こぶが柏の葉につくられ幼虫室が転がって鈴に見立てられることにちなんで「カシワハスズタマバチ」と付けた。

 発表に用いた新種の標本は、つくば市(茨城県)の国立科学博物館自然史標本棟と、米国のスミソニアン国立自然史博物館に収蔵されている。