[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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空気中を漂うマイクロプラスチックを森林が捕捉してくれることを確認

(2024年4月15日)

図1. 日本女子大学の西生田キャンパスを撮影した航空写真。白枠がキャンパスの敷地を示し、赤丸の地点でコナラの葉が採取されました。
©日本女子大学

 軽くて丈夫なプラスチックは、今や私たちの生活にはなくてはならないものになっています。生産量も膨大になり、年間4億トン以上も生産されていると推計されていますが、これほど消費されていると廃棄後に一部が自然界に漏れ出すだけでも、その量はとてつもなく多くなってしまいます。

 自然界に漏れ出たプラスチックは川を通じて海にまで流れ着きます。その間、太陽光に含まれる紫外線を浴びて劣化し、川の流れや海の波にもまれるうちに細かく砕け、微細なマイクロプラスチックになります。海洋生物への影響が心配されるようになっていますが、自然界に漏れ出たプラスチックが影響するのは海洋生物だけではありません。

 実はプラスチックがより微細化すると、空気中を漂う“大気中マイクロプラスチック(AMPs=Airborne microplastics)”となることが明らかになっています。私たち人間を含む、陸上に暮らす生物が呼吸するうちに知らぬ間にAMPsを吸い込んでいるかもしれません。プラスチックには有害物質が含まれることもあるため、空気中からAMPsを取り除く手立てを考える必要があり、そこで注目されるのが森林です。

 森林には空気中の物質を捉えて、空気を浄化する「森林フィルター効果」があることが知られており、森林がAMPsを捕捉し、空気中の数を減らすのに貢献してくれると期待されます。そのため日本女子大学、早稲田大学とPerkinElmer Japan合同会社の研究グループは森林が持つAMPsを捕捉する機能を明らかにする研究に取り組みました。

 研究グループは日本女子大学の西生田キャンパスにある森林で、日本に分布する代表的な広葉樹のコナラの葉を採取(図1)。葉の表面にあるワックス層(エピクチクラワックス)や、トライコームと呼ばれる突起物にAMPsが捕捉されると考えられていることから、①不純物をほとんど含まない超純水で洗浄、②葉を超純水に漬けた状態で超音波をかけて洗浄、③アルカリ溶液の3段階で葉を洗浄しました。そして葉から洗い流されたAMPsを分析した結果、洗浄するごとにAMPsが増えていくことが分かりました(図2)

 

図2.今回の研究では、①超純水洗浄、②超音波洗浄、③アルカリ洗浄の3段階でコナラの葉を洗い流して、葉の表面に付着したAMPsが回収されました。
©日本女子大学
 

 今回の研究成果をもとに、日本全体のコナラ林(約32,500km2)で捕捉されるAMPsを推計したところ、年間420兆個ものAMPsが捕捉されている可能性があることが示唆されました(図3)

図3. 森林の樹冠(樹木丈夫の葉や枝が茂った部分)でAMPsを捕捉してくれると期待されますが、葉に付着したAMPsは落葉とともに土壌に移行して、森林全体に悪影響を及ぼすリスクがあることも分かりました。
©日本女子大学
 

 森林フィルター効果で空気中のAMPsを減らすことが期待される一方で、葉に捕捉されたAMPsは落葉とともに土壌へと移行して、森林全体に悪影響を及ぼすリスクがあることも分かりました。そのため廃棄プラスチックを漏出させないようにするのはもちろんのこと、自然界に存在するマイクロプラスチックを回収する技術の開発も求められるでしょう。

 

【参考】

■日本女子大学プレスリリース

森林が大気中マイクロプラスチックを捕捉することを世界で初めて実証

■論文『Environmental Chemistry Letters』誌

Alkaline extraction yields a higher number of microplastics in forest canopy leaves: implication for microplastic storage

 

斉藤 勝司(さいとう かつじ)
サイエンスライター。大阪府出身。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業。最先端科学技術、次世代医療、環境問題などを取材し、科学雑誌を中心に紹介している。