アズキの栽培は縄文時代に日本で始まり、中国大陸に伝わる―詳細なゲノム解析で複雑な作物進化を解明:農業・食品産業技術総合研究機構
(2025年5月30日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 遺伝資源研究センターと台湾大学の研究グループは5月30日、野生種のアズキが栽培化されたのは日本が起源で、後に中国大陸に伝わったことを解明したと発表した。これまで中国起源説との両論があったが、詳細な遺伝子解析の結果日本起源説に軍配が上がった。この成果は作物の育種に活用が広がると期待される。
和菓子や赤飯に使われるアズキは和食文化を支える重要な作物になっている。イネやムギは約3,000年前に大陸から伝えられており、アズキも同様と考えられてきた。
ところが近年の発掘調査で縄文時代の遺跡からアズキの種子が見つかり、これが中国や韓国の遺跡のものより大型だった。種子は栽培の繰り返しで大型化する傾向がありアズキの日本起源説に繋がった。しかし科学的証拠には乏しかった。
研究グループは、日本と中国を含むアジア各地から集めた「栽培化アズキ」と野生種の「ヤブツルアズキ」の計693系統の全ゲノム配列を解析した。
栽培化アズキの核ゲノム調査では中国起源説が支持されたが、葉緑体のゲノム調査では日本起源説を支持した。葉緑体の全てが日本のヤブツルアズキと同一の型だったことによる。
葉緑体は母性遺伝するため必ず種子親(母親)の葉緑体ゲノムを受け継ぐ。現在の栽培アズキの葉緑体ゲノムは、最初の栽培アズキからずっと受け継がれていたと見られる。
この結果、中国の栽培アズキは日本で栽培化されたヤブツルアズキが中国に広がり、現地のヤブツルアズキと交雑し栽培アズキとなった。考古学研究の成果とも合致し日本起源説を支持する結果となった。
詳細なゲノム解析が複雑な作物の進化を解き明かした成果である。
植物や作物の起源地、進化を明らかにすることは、未利用植物の遺伝的性質を人為的に改良し、より優れた品種を作る育種につながるものと期待される。

遺伝的構造による7グループごとに色分けをしている。灰色は、雑種など遺伝的な分類が曖昧なもの。栽培アズキは東アジアだけでなく、ネパール・ブータンにまで広がっている。左上はヤブツルアズキ(左)と栽培アズキ(右)の種子。(提供:農研機構)