機能性成分を内包したマイクロカプセルの新製法を開発―油や界面活性剤使わず安全性高く、サイズの制御も可能:産業技術総合研究所ほか
(2025年6月25日発表)
(国)産業技術総合研究所と同志社大学の共同研究グループは6月25日、油や界面活性剤を使わずに、生体に安全な材料だけで、大きさが揃った微小液滴「マイクロカプセル」をつくれる技術を開発したと発表した。薬剤成分や細胞、ナノ粒子などを内包でき、安全性や付加価値が高い医薬品、食品、化粧品などの開発への応用が期待されるという。
機能性成分を内包したマイクロカプセルは、近年身のまわりの身近な製品に幅広く利用されている。ただ、これまでの一般的な製法では油や界面活性剤が用いられることが多く、製品への残留や環境への負荷などが課題とされていた。
また、マイクロカプセルの効果を最大限に引き出すには「大きさが揃っていて、できるだけ小さいこと」が鍵とされ、その開発が求められていた。
研究グループは今回、生体適合性がある安全性の高い水溶液のみで大きさの揃ったマイクロカプセルを作る技術を開発した。
マイクロ流体デバイスの研究に取り組んでいた同グループが着目したのは、デバイス材料のシリコーンゴムが持つ「脱水する」というユニークな性質。この性質を利用すると、濃度の低い2種類の水溶液を混ぜて流路に入れるだけで、内部で自然に濃縮が起こり、マイクロカプセルがひとりでに形成されるのではないかと考え、今回それを実証した。
具体的には、水に溶けやすく人体への安全性が高いポリエチレングリコール(PEG)と、多糖類の一種のデキストラン(DEX)を低い濃度で均一に混合、この混合水溶液をマイクロ流路に導入した。すると混合水溶液中の水分だけがシリコーンゴム製の流路壁中へとゆっくり通り抜けていき、PEGとDEXの濃度が徐々に高まる。一定の濃度を超えると、均一に混合した水溶液が2つの水溶液に分かれる「水-水相分離」現象が起きる。
その結果、DEXを主成分とする微小な液滴のマイクロカプセルがひとりでに形成される。マイクロ流路内に閉じ込められた液滴が流路の幅と同じ大きさになると動きが制限され、結果として大きさが揃ったマイクロカプセルが一列に整然と並んだ状態で安定する。
従来の手法では難しかった20µm (マイクロメートル、1µmは100万分の1m )以下の、大きさの揃ったマイクロカプセルを複雑な操作なしに作れるとともに、マイクロ流路の幅を変えるだけでカプセルのサイズを5~20µmの範囲で精密に制御できることを実証した。
さらに、核酸、抗体、ナノ粒子、大腸菌などをあらかじめ混合水溶液に加えておけばマイクロカプセルに効率よく内包できることが確認された。産業基盤技術としての幅広い応用が期待されるとしている。