カタツムリの空き殻に巣を作るハナバチの生態を解明―ハウス栽培のイチゴの授粉など農業利用への道を開く:近畿大学/筑波大学
(2025年5月16日発表)
近畿大学農学部の香取 郁夫(かんどり いくお)准教授と筑波大学生命環境系の横井 智之 助教の研究グループは5月16日、授粉昆虫としてのハナバチの一種のマイマイツツハナバチの生態を解明し、新たな農業利用の可能性につながると発表した。これまでイチゴ栽培などに使われてきたセイヨウミツバチより送粉効率などが高いとの結果が得られた。
昆虫に植物の花粉を運ばせて授粉作業をさせるポリネーター(花粉媒介者)には世界中でセイヨウミツバチが広く使われている。
日本でもリンゴやスイカ、イチゴ、メロンなどの生産に利用されているが、使い勝手の悪い問題も指摘されている。特定の植物の花を避ける傾向や、作物によっては授粉の効率が低下し、外来種のため生態系への影響が心配されることなどだ。
そこで在来種ハナバチの研究が始まった。ハナバチの多くは竹筒や木の穴、地中などに巣を作る習性がある。中でもカタツムリの殻に巣を作る珍しいマイマイツツハナバチが知られている。しかし詳しい生態は不明だったことから農業利用はされてこなかった。
研究グループはマイマイツツハナバチがハウス栽培のイチゴのポリネーターとして活用できるかを探るため3つの実験を実施した。
4種類の巻貝の殻を、草地や建物周辺、林の中、裸地など6つの環境に置き、野外の営巣の好みを探ったところ、中型のカタツムリ(クチベニマイマイ)の殻の営巣率が高かった。
イチゴの花に対しては、送粉効率はセイヨウミツバチと同等かそれ以上だった。
またクチベニマイマイの空き殻をCTスキャンで断層撮影し、3Dプリンターによって内部構造までそっくりのプラスチック製人工殻を作成した。ハウス内に設置してマイマイツツハナバチの営巣率を調べるとほぼ同等であり、実用化の手応えが得られた。
ポリネーターは昆虫の種によって農業利用には一長一短があるため、在来のポリネーターの候補を増やしていくことが農作物の安定生産につながるとしている。