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ドローン空撮とAI解析でスイートコーンの収穫適期を予測―開花前後に1回の空撮だけで効率的な収穫が可能に:農業・食品産業技術総合研究機構

(2024年4月10日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センターの大澤 央 研究員のグループは4月10日、ドローンを使った空撮と人工知能(AI)による物体検出を組み合わせて、スイートコーンの収穫時期を予測する技術を開発したと発表した。広大な畑の収穫適期を予測するのは難しく、この技術によって計画的、効率的に推進できるとみている。

 日本のスイートコーンの約4割は北海道で収穫される。5月上旬に種まきし、7月上旬に雄花の集まった雄穂(ゆうすい)が出る。7月下旬から8月上旬にかけて雌穂(しすい)からヒゲ(絹糸・けんし)が生える。その後8月中旬から下旬に収穫適期を迎えるのが一般的とされる。

 可食部となる雌穂は収穫適期の前は粒がそろわず、適期を過ぎると水分が減ってしぼんでしまい品質が落ちやすい。収穫適期を正確に見極める方法が求められていた。

 スイートコーンの絹糸の生育状態は、ドローンによって1ha(ヘクタール)あたり5分程度で空撮でき、しかも1回で済む。この画像を人工知能で分析し、開花状況や畑全体の生育状況から絹糸の出る日の予測に使う。

収穫適期予測ツールは、①ドローン画像で撮った雄穂の色調から開花段階を推定し、生育状況を高精度で解析する ②生育段階(未開花、開花前期、開花後期)の雄穂数と割合から、予測モデルを使って絹糸抽出日を出力 ③予測絹糸抽出日と積算気温によって抽出適期を出力する。

 畑の規模に関わらず1ヶ月前には収穫適期が予測できるため計画的な作業に役立つ。

 札幌市内の農研機構の畑で2021年度から2022年度にかけて、この収穫適期予測日と手取り収穫の収穫日を比較したところ、34件のうち30件(88.2%)が一致した。

 これまではスイートコーンの代表的な品種「恵味スター」で実証したが、2024年度から2025年度には農業現場に適した方法で導入し、他の品種でも検討する。

雄穂検出AIによる判別結果
赤色四角枠は未開花、黄色四角枠は開花前期、青色四角枠は開花後期を示す。
©農研機構 北海道農業研究センター