
Vero E6細胞と共培養したフィロバクテリウム・ローデンティウムの透過電子顕微鏡写真。細胞間隙に長さ8マイクロメートルほどのフィラメント状菌体(赤矢印頭)と、細胞の微絨毛の横断面(小黒矢印)が見える(提供:(国)理化学研究所)
(国)理化学研究所と(国)放射線医学総合研究所の共同研究グループは12月7日、マウスやラットに肺炎を起こす未分類細菌が、分類学の「科」レベルにおける新しい生物群であることを突き止めたと発表した。この細菌に学名がつくのは発見以来35年ぶりのことという。
■35年ぶりの命名に
この細菌は、マウスやラットに慢性呼吸器疾患を起こすグラム染色陰性のフィラメント状桿菌。通常の寒天培地で増殖させることができず、基本性質を調べることが困難だったことから、学名は付けられておらず、「カーバチルス(呼吸器線毛付着桿菌の略)」と呼ばれていた。
研究グループは平成23年にラットから分離した「カーバチルス」SMR株の試験管内での効率的な単独培養法を見出し、今回、この方法をさらに改良、発展させ、浮遊状態で安定して増殖した株を使ってカーバチルスSMR株の様々な基本性質を調べた。
細菌の発育温度、耐塩性、pH依存性、菌体脂肪酸素性、遺伝子配列による系統樹解析など各種調査の結果、「科」レベルで新しい生物群であると考えられると結論、このカーバチルスを、バクテロイデス門スフィンゴバクテリウム目の新しい科であるフィロバクテリウム科、その中の新しい属であるフィロバクテリウム属の新種「フィロバクテリウム・ローデンティウム」と命名した。
フィロバクテリウムはフィラメント状細菌の意味で、ローデンティウムはマウスやラットが属するげっ歯類由来という意味という。論文はすでに分類や命名の公式機関誌に受理されており、採択されると学名と分類学上の位置づけが国際的に認められたことになるという。