大きな岩石の方がすべりやすいことが判明
―1.5mの接触面で実験、新たな岩石摩擦メカニズムを発見
:防災科学技術研究所(2015年12月10日発表)

 (国)防災科学技術研究所の地震・火山防災研究ユニットは12月10日、地震の原因となる大規模な岩石摩擦すべり実験を実施し、接触面が大きいと摩擦力が減少して、すべりやすくなることを発見したと発表した。従来は数cm規模の接触面の岩石試料で摩擦の性質を推定していたが、今回は1.5mの接触面を持つ試料にスケールアップしたところ、大きな岩石の方がすべりやすいことを世界で初めて明らかにした。同様の現象は自然界でも起きることから、巨大地震の被害予測を見直すことにもつながると期待される。

 

■想定外の場所でも大きなすべりの可能性

 

 大地震は地下の断層が秒速数mで大規模にすべることで発生する。断層の摩擦がどのように変化するかが、大地震の振る舞いを知るための基本として必要だった。

 一般的には、平らによく磨いた2つの岩石試料を密着させ、こすり合わせる岩石摩擦すべり実験をする。従来の接触面は数cmだが、地震を起こす自然界の断層はkm規模と10万倍もの差があるため、より自然に近いメートル規模の資料にスケールアップした。

 試料にはマグマが深部でゆっくり固まってできた変斑れい岩を使った。メートル級は接触面が1.5m 、幅0.1mのものを、センチ級は外径2cm、内径0.8cmの円筒形を使った。試験機が回転式せん断摩擦装置のために円筒形となった。

 実験の結果、センチ級は摩擦係数が約0.1メガジュール(毎秒・1 ㎡当たり)を境に急速に減少するのに対して、メートル級はそれより1桁低い0.01メガジュール(同)を境に急減した。コンピューターのシミュレーションとも実験結果が一致した。

 実験後には接触面上に傷と磨耗物が見つかった。すべり中に自然に発生し成長したもので、これが接触面上に力学的な不均質をもたらしたと分析している。野外の断層でも、傷や磨耗物の不均質物質は普通に見られるため、不均質が断層すべりを発生させたと予想できる。この結果、「これまで地震発生の条件がなかった場所でも、予想以上に大きなすべりが起き、大地震につながる可能性も想定される」としている。

 同研究所の大型振動台は、多数のポンプと大量の油を使う油圧制御式で、最大すべり速度が秒速1m、最大すべり量40cmと、大きな岩石試料を大きく変形させる能力がある。このため他では不可能な大型実験が実現した。

 今後は、野外にある地震の痕跡の断層路頭と、メートル規模で再現した人工断層面を比較しながら、双方に共通している性質を抽出する作業を通して、大地震発生のメカニズムを解明することにしている。

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