(国)物質・材料研究機構は12月7日、貴重なレアメタルや貴金属の高感度検出・抽出技術を開発したと発表した。ナノ(10億分の1)メートル単位の微細な孔を持つ吸着剤の表面構造を改良、1ppm(100万分の1)以下の微量レアメタルも吸着・回収できるようにした。廃棄家電製品など電子機器に含まれるレアメタルや貴金属を回収・再利用する”都市鉱山”の開発促進に役立つと期待している。
■“都市鉱山”の開発促進へ
開発したのは同機構・元素戦略材料センター。これまで吸着剤として、シリカやアルミナなどの複合酸化物の内部にナノ単位の細孔が無数に開いた「高秩序メソポーラス物質(HOM)」の開発を進めてきた。
今回、この技術をもとに、吸着機能に大きな影響を与える細孔の形を自転車タイヤのスポークが四方八方に伸びているような三次元スポーク状の空隙構造に改良することに成功した。この結果、吸着剤の性能に大きく影響する表面積を1g当たり500~1000㎡にすることができ、1ppm以下のレアメタルや貴金属でも効率よく吸着できるようになった。
実験では、電子基板とリチウム電池をそれぞれ溶かした溶液から金、銀、パラジウム、コバルトの抽出を試みた。新吸着剤の細孔表面の化学的性質を変えて特定の物質と反応しやすいよう処理して実験したところ、1ppm以下の金やパラジウム、数ppmのコバルトが70%近く回収できることが分かった。吸着剤がとらえたこれらの微量金属は95%以上が化学的な処理によって吸着剤から分離・回収できた。
さらに微量物質の検出限界を調べたところ、金が1万分の6ppm、コバルトが1万分の5ppm、パラジウムが1万分の19ppmという微量でも検出でき、極めて希薄な溶液からも目的とする金属が検出・抽出可能であることが確認できた。新吸着剤は8回繰り返し使用しても抽出能力の劣化は90%にとどまり、繰り返し使用可能なこともわかった。
同研究機構は、新吸着剤が他のレアメタルにも応用可能だとして今後は適用する物質の対象を広げていきたいとしている。

三次元スポーク状空隙構造の模式図(提供:(国)物質・材料研究機構)