自然科学研究機構分子科学研究所、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、北海道大学、(国)理化学研究所などから成る共同研究グループは12月9日、光触媒の一種である酸化タングステンの光励起状態における局所構造変化の様子を観察することに成功したと発表した。
■X線自由電子レーザー「SACLA」使い測定
光触媒として現在最も開発が進んでいる酸化チタンは太陽光のわずか数%の紫外光しか利用できないが、酸化タングステンは青色光より短波長の光を吸収することから、可視光応答型光触媒として近年注目されている。
酸化タングステンの光励起状態に関するこれまでの研究によると、非常に長寿命の光キャリア(電荷の担い手)が存在していて、光触媒として欠かせない重要な特性を備えていることが確認されている。
しかし、光キャリアが生成している励起状態の構造については研究例がなく、長寿命の光キャリアの性質などもよく分かっていなかった。
研究グループは理化学研究所播磨事業所のX線自由電子レーザー「SACLA」を用いて超高速の時間分解能測定を試み、0.5ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒)の時間分解能で酸化タングステン光触媒のX線吸収分光測定に成功、これにより、励起状態でタングステン周囲の局所構造が変化していく様子を解き明かした。
今後、さらなる反応過程の解明を進め、光触媒機能の向上研究などに結び付けたいとしている。