(国)産業技術総合研究所は12月10日、次世代メモリーの一つ「MRAM(磁気抵抗メモリー)」が、電流を必要としない新しい情報の書き込み方式「電圧書き込み方式」で安定動作することを実証、実用化に必要なエラー率実現に道筋をつけたしたと発表した。超消費電力の電圧書き込み型不揮発メモリー開発の加速が期待されるという。
■実用化に必要なエラー率達成も可能
MRAMは、記録媒体に半導体ではなく磁性体を用いたメモリー。高速・高集積・不揮発性の三拍子揃ったユニバーサル・メモリーになるとして注目されている。
そのMRAMの情報書き込み方式としては、磁界による方式、電流による方式、電圧による方式が考えられ、現在、世界規模で電流書き込み方式のMRAM開発が進められている。
しかし、書き込み電流による電力消費があるため、省電力化に限界がある。そこで浮上してきているのが電圧書き込み方式。これが実用になれば、書き込みに電流が不要なので超低消費電力のメモリーが実現する。
非常に薄い金属磁石層(記録層)からなる磁気トンネル接合素子に、ナノ秒(ナノは10億分の1)程度のごく短い時間電圧パルスをかけると記録層の磁化の向きが反転する磁化反転という現象が生じ、情報の書き込みができる。これが電圧書き込み方式の原理だが、メモリーとしての安定動作が可能かどうかはこれまで分かっていなかった。
今回、安定動作を実証したのは、厚さ1.8nm(ナノメートル)の鉄ボロン合金を記録層に使った直径120nmの微小な円柱状の素子。絶縁層の酸化マグネシウム層を介して電圧をかけ、10万回の書き込みを行って素子の電気抵抗の変化から磁化反転の成功・失敗を判定、書き込みエラー率を評価した。実験では、4×10-3という比較的低い書き込みエラー率を実現、計算機シミュレーションでもメモリーに求められる10-10~10-15というエラー率達成が可能で実用化への道筋が明らかになったとしている。
産総研は、「今回の成果により、超低消費電力の電圧書き込み型不揮発性メモリー『電圧トルクMRAM』の研究開発の加速が期待される」という。