(国)国立環境研究所は12月8日、英国アバディーン大学のピート・スミス教授らとの研究で温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)を大気中から取り除く技術の大規模な導入には環境・経済・エネルギーの面で多くの制約があるとする研究成果をまとめ発表した。気温上昇を2℃未満に抑えるという国際的合意目標を達成するには、CO2除去技術に頼るのではなく、排出削減対策を実施すべきとしている。
■最善策は排出の積極的削減
この研究は、国際的な炭素循環管理政策の策定を支援する国際プログラム「グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)」として、同プロジェクトを代表する40名の協力者によって行われた。
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によると、地球の気温上昇を産業革命前と比較して2℃未満に抑えるには、今世紀中に全世界のCO2排出を正味でマイナスにするネガティブエミッションを達成する必要があるとされている。
そこでGCPではCO2の回収・貯蔵(CCS)などのネガティブエミッション技術を大規模に実行した場合の影響を分析した。
具体的には、作物バイオ燃料、森林バイオ燃料をCCSと組み合わせたり、大気中のCO2を直接吸収固定する技術などを用いたりした場合の、必要な土地面積、必要な水の量、肥料として必要となる窒素の量、アルベド(地表面反射率)の変化、土壌養分の流出、必要となるエネルギー、対策のコストなどを定量的に評価した。
その結果、ネガティブエミッションの各技術で特徴は異なるが、環境面・経済面・エネルギー面での影響は大きく、特に大規模なバイオ燃料の生産に伴って、土地や水の利用を巡って食料生産との競合や、森林の減少、窒素利用による温室効果ガスの排出、土壌劣化、大量のエネルギー消費や高コスト化など、環境や持続可能性に関わる多くの制約があることが判明したという。
2℃の目標達成のためのネガティブエミッション技術の実施には、これらの制約に対する総合的な検討が今後の重要な課題であり、現時点で考えられる目標達成の最善の策としては、温室効果ガスの排出を今すぐ積極的に削減すること以外にないとしている。