(国)産業技術総合研究所と(国)科学技術振興機構は12月11日、高圧の水素を連続して製造する新技術を開発したと発表した。工業用原料の一種、ギ酸を分解する化学反応によって、圧縮機を使わずに40Mpa(メガパスカル、約400気圧)以上の高圧水素を連続して作ることができる。これにより水素ステーションのコンパクト化や水素の低コスト化が期待できるという。
■水素ステーションのコンパクト化など期待
水素を燃料とする燃料電池自動車が国内でも市販され、ガソリンスタンドのように水素を販売する水素ステーションの設置が始まっているが、多額の設備費がかかるという問題を抱えている。特に、水素の圧力を上げる圧縮機は、設備費の約30%を占め、水素の圧縮にかかるコストは供給する水素価格の約50%にもなっているといわれる。
新水素製造技術は、「イリジウム錯体」と呼ばれるイリジウムの化合物を触媒にして圧縮機を一切使わないでギ酸から高圧水素を作るというもの。ギ酸とイリジウム錯体触媒を耐圧の反応容器に入れ、80℃の低い温度で反応させる簡単な操作で40Mpa以上の高圧水素を連続的に発生させることができた。
これまでに50Mpaまでの高圧水素の発生を確認しているが、理論上は225Mpaまでアップできるとし、燃料電池自動車などで求められる70Mpaの高圧水素の供給も十分可能という。
ギ酸から発生する水素は、二酸化炭素(CO2)を含むが、新技術で得られる水素は高圧なので二酸化炭素を液体状態にして分離でき、「理想的には93%にまで水素を精製することができる」(産総研)。
産総研は、引き続き水素ステーションで必要な70Mpaの高圧水素を99.999%の純度に近づける技術の開発に取り組むともに精製の際に分離される高圧の液体二酸化炭素の活用についての研究を進めるとしている。
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ギ酸から発生した水素と二酸化炭素の発生量と圧力(提供:(国)産業技術総合研究所)