J-PARCで世界最高強度、大量のミュオン得る
―1パルスあたり250万個を達成
:高エネルギー加速器研究機構

 高エネルギー加速器研究機構は11月26日、磁性や超伝導などの物性物理学や考古学資料の強力な分析手段などに使われる素粒子「ミュオン」を大量に得ることに成功したと発表した。(独)日本原子力研究開発機構と共同運用するJ-PARC(大強度陽子加速器施設)で1パルスあたり250万個を達成、世界でも群を抜いた強度を達成した。分析に費やす時間を従来の10分の1に短縮できるほか、分解能の大幅な向上が期待できる。
 ミュオンは、正または負の電荷を持ち、質量は電子の約200倍。宇宙線としても常時地球に降り注いでいる素粒子。J-PARCは光速近くまで加速した陽子を標的物質に衝突させてこのミュオンを人工的に生成し、点滅するパルスビームとして取り出す。
 高エネ研の三宅康博教授らの研究グループは今回、超電導軸収束電磁石など3種類の電磁石を開発。これによって標的物質に衝突して生成したミュオンを高効率で捕獲し、実験エリアまでビームとして輸送することに成功した。その結果、これまでにない数のミュオンを1パルス内に含むパルスビームを実現した。
 これまで1パルス内に含まれるミュオンの数は、2010年3月にJ-PARCで得られた18万個が世界最高記録だった。世界的にみても英国ラザフォード・アップルトン研究所の3万個が最高で、今回の記録はこれらを大幅に上回ったことになる。
 研究グループは今後、高強度のミュオンの速度を超低速化することで新しい3次元画像分析を可能とずる「超低速ミュオン顕微鏡」の実現や、現在の素粒子の標準模型を超える新しい物理法則の研究などにつなげたいとしている。

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