(独)産業技術総合研究所と筑波大学、科学技術振興機構は11月30日、炭素原子のシート状物質であるグラフェンにイオン性分子を塗布すると半導体化できることを理論的に突き止めたと発表した。グラフェンを次世代の半導体デバイスに応用する可能性が開けたという。
グラフェンは、グラファイト(黒鉛)を構成している炭素原子1層から成るシート状物質。炭素原子は、蜂の巣状に6角形のネットを組んでいる。2次元物質であるこのグラフェンは特異な電子状態を持ち、電子移動度が極めて大きいなどの特徴があり、次世代のポストシリコン材料として注目されている。
ただ、グラフェン自身は一種の金属であり、そのままでは半導体材料として用いることはできないため、半導体デバイス応用のカギとなるグラフェンの半導体化が研究の課題になっている。
計算科学の手法を用いてこの課題に取り組んでいた研究チームは今回、2層のグラフェンの表面に陽イオン分子、陰イオン分子を吸着させた、陽イオン分子膜-2層グラフェン-陰イオン分子膜のサンドイッチ構造体をつくると、グラフェンの半導体化が実現できることを理論的に示すことに成功した。
さらに、陽イオン分子と陰イオン分子の組み合わせにより、半導体化した2層グラフェンの電子構造を自由に制御でき、p型半導体にしたりn型半導体にしたりすることができることも分かったという。
今回の成果は、2層グラフェンによるp-n接合構造の実現の可能性を示しており、研究チームは今後、基板材料や電極金属などとの接合の影響などを検討、検証したいとしている。
No.2012-48
2012年11月26日~2012年12月2日