(国)産業技術総合研究所は6月10日、香川大学、長岡技術科学大学の研究者らの共同研究で、半導体ナノ粒子である量子ドットの発光を安定化するメカニズムを解明したと発表した。量子ドットを長時間光らせておけるため、細胞内の核酸やタンパク質といった生体分子の検出・観察に活用でき、創薬や病気の原因究明に役立つという。
■創薬や病気の原因究明などに寄与
生きている細胞内で個々の分子を観察する研究を「一分子生体イメージング」といい、近年研究が盛んになっている。生体分子はそのままでは光学顕微鏡で高感度に観察することができないため、発光性の色素か量子ドットで分子を光らせるなどの方法がとられているが、色素による染色は退色が早く、光安定性に優れる量子ドットの発光も退色が避けられないという問題があった。
研究チームは今回、励起状態にある量子ドットが電子を放出しイオン化(オージェ・イオン化)すると、通常は電子のスピンの向きが三重項と呼ばれる状態の酸素が変化してできる一重項酸素によって量子ドットが酸化されなくなり、発光が安定化することを見出した。
またオージェ・イオン化していない中性の量子ドットでは、一重項酸素捕捉剤を用いると量子ドットの酸化が抑制されることも見出した。
今後は一分子レベルで間断にない発光に基づく生体イメージングの実現などを目指すという。