豚のコラーゲンから絆創膏型人工皮膚を開発
―やけど治療などに簡単に使え、きれいに治せる
:佐賀大学/農業生物資源研究所/祐徳薬品工業/関東化学(2015年6月9日発表)

 (国)農業生物資源研究所(生物研)は6月9日、佐賀大学、祐徳薬品工業(株)、関東化学(株)などとの共同研究で、豚のコラーゲン(動物の皮革などを構成するタンパク質の一種)からやけどなどの治療に簡単に使え、きれいに治せる絆創膏(ばんそうこう)型の人工皮膚を開発したと発表した。傷に貼るだけでよく、常温で長期保管も可能なため、皮膚移植設備のない病院での重傷者救急医療のための革新的な医療機器になりそう。今後、臨床試験を経て、実用化を目指す。

 

■常温で長期保管でき、皮膚移植設備なくても治療

 

 人体の皮膚は主にコラーゲンからできているが、今回開発された絆創膏型の人工皮膚は、生物研の竹澤俊明上級研究員が豚のコラーゲンから開発した「アテロコラーゲンビトリゲル膜」と呼ばれる高密度コラーゲン繊維の新素材で、薄くて強度があり、しかも透明なので患部の状態確認も容易。実際に使用するには、この膜の上にフイルムをかぶせ、さらにテープで絆創膏の様に傷に固定する。

 動物実験では、この絆創膏型の人工皮膚を患部に当てて経過を観測したところ、組織に定着しながら体から運ばれたコラーゲンと一体化し、皮膚の再生を促すので、傷の治りが早く、傷跡の隆起なども見られなかった。

 熱傷など広い範囲に皮膚の生涯を受けると、脱水や感染症により、生命の危機に陥る。治療には、外界と傷を隔てるバリア機能の回復が重要。治療として、体の別のところの皮膚を使う植皮術や、培養皮膚の移植などがあるが、設備のある病院に限られたり、治療開始まで時間がかかったりする。今回開発した人工皮膚は、救急医療現場などで画期的な治療法になると期待される。

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動物実験の結果、人工皮膚では傷跡の隆起は見られなかった(提供:(国)農業生物資源研究所)