日食利用し太陽光の大気中オゾンへの影響を調査
―月の影の暗い部分で「中間圏」のオゾン量の増大を観測
:宇宙航空研究開発機構/国立環境研究所/京都大学(2015年6月12日発表)

 (国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月12日、国立環境研究所、京都大学との共同研究で、国際宇宙ステーション(ISS)搭載の超電導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)観測装置の高精度な観測データを用いて、2010年1月15日に起きた日食の際の地球大気中のオゾン量の変化を調べた結果を発表した。それによると、月の影で暗くなっている地域では明るい地域に比べて、高度50kmら80kmの「中間圏」と呼ばれる層のオゾン量が多くなっていることが分かった。

 

■ISS搭載の観測装置の高精度データを分析

 

 この太陽光量によるオゾン量変化の様子は一律ではなく、地表からの高さによって異なっていることも分かった。地球大気中のオゾン量はさまざまな要因で決まるが、これまでの観測は精度が低く、日食を利用して太陽光量の変化だけでの大気中のオゾンに与える影響の結果を得られたのは今回が初めて。この成果は5 月の米国地球物理学連合発行の学術誌「Geophysical Research Letters」オンライン版に掲載された。

 研究チームは、地球大気中のオゾン量を決める他の要因の調査も進めている。これら要因データの解析を進めることで、地球大気中のオゾン生成と破壊のメカニズムの解明が進み、減少した地球大気中のオゾン量の回復時期も正確に予想できるようになると期待される。

 「SMILES」はISSの日本実験棟の船外実験プラットフォームにセットされ、JAXAなどが運用していた高感度超伝導センサー利用の成層圏大気中の微量分子測定装置。2009年9月にH-ⅡBロケット1号機で打ち上げられた宇宙ステーション補給機1号機(HTV1)でISSに運ばれ、同年11月から2010年4月まで種々のデータを集めていた。今回発表の成果はこの期間中に得たもので、その後、装置に故障が生じ、装置の運用は中止された。

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