(国)宇宙航空研究機構と岩手医科大学、昭和大学、長岡技術科学大学は6月10日、歯周病原因菌の生育に関わっているペプチド分解酵素「DPP11」の詳細な立体構造を解明したと発表した。歯周病原因菌がDPP11を使って菌の外から取り込んだエネルギー源を吸収できる形に変換している仕組みも解明した。歯周病の治療薬開発につながる成果という。
■新たな歯周病治療薬の開発に期待
研究グループは国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟で、DPP11の高品質な結晶を生成させ、X線を利用したタンパク質の構造解析法によって立体構造を解明した。ペプチド分解酵素DPP11は、アミノ酸がたくさん連なったタンパク質の分解物であるペプチドを、さらに分解してアミノ酸が2個連なったジペプチドを作り出す作用がある酵素。
歯周病原因菌の内膜はこのジペプチドを選択的に透過して体内に取り込み、菌はそれをエネルギー源や栄養源としているため、この菌にとってDPP11は生育や増殖に欠かせない働きをしている。
この働きを阻害する化合物を作れば新たな抗菌薬となることが期待されるため、研究グループは今回、地上では得られない高品質の結晶を、宇宙環境を利用して作製、高い分解能で立体構造を解明した。
さらに得られたこの構造から、この酵素のペプチド分解機構やジペプチドの認識機構などを解明した。
これらの知見は歯周病の治療薬だけではなく、タンパク質やペプチドを栄養源とする病原菌の抗菌薬開発に結び付く成果で、それらの創薬に向けた研究開発を進めるという。