イッテルビウム原子使い誤差900万年に1秒を実現
―国際標準の次世代時計候補に採択
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は11月1日、900万年に1秒の誤差しか生じない時計を開発、国際時間標準を決める次世代時計の候補に採択されたと発表した。開発したのは光格子時計と呼ばれる原子時計の一種で、イッテルビウム原子を用いることにより、これまで計測不可能だった電磁場や重力場の微弱な変動も捉えられ、重力場測定など基礎科学の発展に貢献すると期待している。
 開発したのは、産総研計測標準研究部門の洪鋒雷研究科長、安田正美研究員らの研究グループ。10月にフランスで開かれたメートル条約関連会議で新しい「秒」を定義する次世代時計の候補に採択された。
 原子はそれぞれ固有の周波数の電磁波を吸収・放射する性質があり、時間の逆数に相当するその周波数を測定することで時間測定が可能になる。現在はセシウム原子が出すマイクロ波を利用して「秒」を定義しているが、国際度量衡委員会がさらなる精度向上を目指して次世代時計の候補探しを進めている。
 光格子時計は、セシウム原子のマイクロ波よりも約10万倍高い周波数を持つ光を利用して高精度の時間計測を可能にしようというもの。東京大学の研究者がその実現法として、2001年におよそ100万個の原子をレーザー光で一定空間に閉じ込める手法を提案、今回、産総研の研究グループがイッテルビウム原子を用いて実現した。これまでにもストロンチウム原子を用いた光格子時計が開発されていたが、イッテルビウム原子による光格子時計は、その性能を大きくしのぐ可能性があるとして開発が求められていた。
 イッテルビウム光格子時計は、原理的には宇宙の年齢に相当する137億年間動かしても1秒も誤差のない時計が実現できるとして、研究グループはさらに精度と信頼性の向上を進め標準時計としての完成度を高めたいとしている。

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