レーザー使った高品質単結晶育成装置を開発
―従来方法では難しい新機能の材料開発に期待
:産業技術総合研究所/クリスタルシステム/ミヤチテクノス

 (独)産業技術総合研究所は11月2日、(株)クリスタルシステム、ミヤチテクノス(株)と共同で、レーザー加熱を用いた高品質単結晶育成装置を開発したと発表した。
 新装置は、垂直に立てた単結晶原料棒を回転させ、その外周側円周上に配置したレーザー(レーザーダイオード:LD)からのレーザー光を一部分だけに集中して照射し、下部から順に単結晶化していくというもの。
 産総研は、機能性酸化物と呼ばれる材料の単結晶作製と、それを使う新デバイスの研究開発に取り組んでいるが、従来の代表的単結晶育成法のフローティングゾーン(FZ)法では単結晶が育成できない材料にぶつかり、今回の新装置を開発した。
 右の図は、新装置の概念図で、レーザーを外周側円周上に奇数本配置するところが最大のミソ。高品質な単結晶を得るには均一な加熱が不可欠だが、加熱の均一性をアップするためレーザー光のビーム数と均一度の関係をシミュレーションし、ビームを奇数本にすると均一性が高くなることを見つけ、最大出力50Wのレーザー7本からなる同350Wの装置に仕上げた。
 この350Wという出力は、従来型のレーザー加熱装置の出力よりかなり低いが、融点が約2,000℃のルビーも溶融できる。
 機能性酸化物の分野では、従来のFZ法で育成できないビスマスフェライト単結晶が注目されているが、産総研などの共同研究チームは、この新装置で高品質のビスマスフェライト単結晶を再現性良く育成できることを確認したとしている。
 産総研は、「他にも、銅酸化物高温超電導体やシリコンなどの高品質結晶が作製でき、今後さらに多くの材料への適用が期待できる」としており、「同一装置で多種多様な結晶を再現性良く育成できるので、少量多品種製造に適している」とみている。

詳しくはこちら

新開発の高品質単結晶育成装置の概念図(提供:産業技術総合研究所)