マイクロリアクター使う過酸化水素の新製法を開発
:産業技術総合研究所/三菱ガス化学

 (独)産業技術総合研究所は9月14日、三菱ガス化学(株)と共同でマイクロリアクターを使う新しい過酸化水素製造プロセスの開発に成功したと発表した。
 切り傷の殺菌から半導体素子生産まで幅広い用途を持つ基礎化学品の過酸化水素は、現在石油コンビナートで大規模に生産されている。それに対し、新技術は、微小な反応器(マイクロリアクター)の中で水素と酸素の直接反応により10気圧、室温という温和な条件で必要な濃度の過酸化水素を作ることができる。
 水素と酸素を直接反応させて過酸化水素にする直接法は、爆発の危険を回避しなければならない上、50~100気圧という高圧が必要だったため実用化に至っていない。新技術は、その壁を破ると共に、必要なスペックの過酸化水素を必要な量だけ必要な時にその場(オンサイト)で作るオンサイト生産に道を開いたことになる。同研究所と三菱ガス化学は、共同研究を継続・発展させ、オンサイト生産の実証研究を進める計画。
 新製法は、東京大学大学院工学系研究科・北森武彦教授と(財)神奈川科学技術アカデミーが開発したマイクロ化学チップ製造技術をベースにして産総研が独自開発したガラス製マイクロリアクターと、過酸化水素メーカーである三菱ガス化学の触媒技術を融合して実現したもので、濃度10%の過酸化水素を40%以上の高収率で製造できる。
 ガラス製マイクロリアクターは、長さ7cm、幅3cmのガラス板に反応の場となる触媒を充填した微細なマイクロチャンネル(溝)を設けた構造。マイクロチャンネルの幅を600μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)前後にすると水素と酸素の反応が安全に進むことを見つけた。
 10気圧、室温という温和な条件下で濃度10%の過酸化水素水溶液を製造したのは、世界でも初めてという。
 同研究所は、ファインケミカル(精密化学)などの分野への用途展開を図っていくことにしている。

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過酸化水素を作る新開発のガラス製マイクロリアクター(提供:産業技術総合研究所)