(独)産業技術総合研究所は9月13日、優れた特性を持つ粘土膜を用いた高性能で多機能な3種のシート材と、水蒸気バリア膜用粘土の量産プロセスを開発したと発表した。いずれも産総研コンソーシアム参加企業との共同研究成果で、半年から2年以内に製品化を目指す。 粘土を主成分とする粘土膜材料は、耐熱性、不燃性、ガスバリア性など粘土特有の特性を持つ。産総研は、粘土結晶を主原料とする粘土膜を6年前に開発、大学や企業と協力して実用化開発に取り組んでいた。 今回開発した新材料の1つは、高温環境下でもアスベスト(石綿)製品に劣らないシール性と耐久性、取り扱い特性を持つ耐熱シール材。粘土と無機繊維などの耐熱材を主原料に、連続シート材として製造する方法を確立した。パイプやフランジなどの接合部に挟み込むガスケット製品の非アスベスト化が可能という。 2つ目は、ガラス繊維強化プラスチックの表面を粘土膜で被覆した複合材。透明性、不燃性、割れにくさを備えており、透明不燃シートとして建築、鉄道、自動車、航空・宇宙、エネルギー関連機器など広範な分野での利用が期待できるという。 3つ目は、光触媒-粘土フィルター。粘土を主原料とする多孔質柔軟シートで、孔の内側表面に多くの酸化チタン微粒子を付着させてあり、高い光触媒活性を発揮する。インフルエンザウイルス(H1N1)に対する不活性化試験では、紫外線照射によるウイルス抑制率99%以上を確認できたという。ウイルス不活化フィルターなどの用途を探っている。 もう1つの水蒸気バリア膜用粘土の製法は、天然粘土の中で特に膜になり易い粘土を選択、ナトリウムイオンなどを効率的にリチウムイオンにイオン交換する方法を確立し、水蒸気バリア膜用粘土へと改質する生産プロセスを開発した。有機薄膜太陽電池などの防湿シートに有用という。 いずれも2010年5月に設立した産総研コンソーシアム「クレイチーム」に参加する企業との共同研究成果。遅くとも2年以内には製品化したいとしている。 詳しくはこちら |  |
新開発の耐熱シール材で作ったガスケットの試作品(提供:産業技術総合研究所) |
|