水晶使い波長193nmの真空紫外線を発生させることに成功
:物質・材料研究機構/ニコン/ニデック

 (独)物質・材料研究機構は9月13日、(株)ニコン、(株)ニデックと共同で水晶を用いたレーザー光の波長変換デバイスを開発、波長193nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の真空紫外線を生み出すことに成功したと発表した。半導体リソグラフィー(微細加工)の光や眼の治療に使う紫外線レーザーなどへの応用が期待される。また、光学系が簡単になり、光源を小型化できるので、組み込み光源への展開も可能になる。
 真空紫外線とは、紫外線の中でも短波長の10~200nm領域の紫外線のことだが、これまでの強誘電体材料を使った波長変換デバイスでの波長変換では波長300nmへの変換が限度だった。
 このため、半導体微細加工の光リソグラフィーや眼科のレーザー角膜手術では、希ガスとハロゲンガスを使う発生波長193nmのエキシマレーザーが光源に用いられていた。もし、193nmの真空紫外線が固体材料で実現すれば、装置を大幅に小型化、メンテナンスフリーな光源が実現する。
 水晶は、古くから宝石として知られ、熱や水分での特性変化が殆ど見られない安定な材料として光学フィルターやクオーツ時計に使われているが、波長変換デバイスには用いられなかった。波長変換の効率を上げるための分極反転という細工が自発的な電気分極のある強誘電体材料なら電圧を加えればできるのに、自発的分極の無い常誘電体の水晶ではそれができない。そこで同機構の研究者は、電圧の代わりに高圧を加えることを考えた。
 水晶に必要な加工をしてから特別な用具に挟み、350ºCで1cm角当たりに約1tの加重をピストンで加える。すると、水晶にツイン(双晶)構造と呼ばれる微細な壁の列が形成され、これで波長変換が行われる。今回は、周期9.6μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)のツイン構造を作製、387nmの紫外レーザー光を193nmの真空紫外レーザー光に変換することに成功した。

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