(独)物質・材料研究機構は9月14日、窒化ホウ素ナノチューブの引っ張り強度の測定に成功したと発表した。ナノメートル(nm、1nmは10億分の1m)サイズの材料の強度を測れる独自の「ナノ引張試験機」を開発、これを電子顕微鏡の中に組み込んで測った。引っ張り強度は、鉄鋼の15倍以上の約30ギガ(1ギガは10億)パスカル、ヤング率はダイヤモンドに匹敵する9,000ギガパスカルだったという。
窒化ホウ素ナノチューブは、窒素とホウ素の原子が網目状に並び、nmサイズの微細な円筒構造を持つ物質。炭素原子でできたカーボンナノチューブに比べて耐熱性、耐酸化性、耐薬品性に優れると共に、カーボンナノチューブが半導体や金属的な性質を示すのに対して絶縁性を示すという特徴がある。機械的性質もカーボンナノチューブ同様に優れることから樹脂や金属、セラミックスの強化材などとしての利用が期待されているが、機械的な強度は測りにくく、これまで測定例はなかった。
物材研のチームは今回、ナノチューブの一端を引張試験機の力検出カンチレバーに、もう一端をピエゾ(圧電)モーター駆動の金属棒にそれぞれロウの接着剤で固定するという方法を考案、電子顕微鏡でナノチューブの微細構造の変化を観察しながら機械的特性をその場観察する技術を開発した。
測定したのは、直径10~50nm、長さ数百nmの合計14 本のナノチューブ。これらのデータから引っ張り強度などが明らかになったほか、カーボンナノチューブの5倍の外部荷重に耐え、極めて破断しにくいことが分かったという。データが取得できたことで強化材などとしての用途開発が進むと研究チームは期待している。
No.2010-36
2010年9月13日~2010年9月19日