(独)産業技術総合研究所は9月16日、酸化チタン、酸化スズなど各種の半導体酸化物の透明な多孔質薄膜を簡単に作る新技術を開発したと発表した。 多孔質材料は、孔の大きさで分類され、孔径分布が2nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)未満の孔をミクロポーラス、2~50nmをメソポーラス、50nm以上をマクロポーラスと呼ぶ。 新技術は、「マクロポーラス化技術」といい、界面活性剤溶液に分散させた半導体酸化物の原料をスピンコート法により一段階で成膜、それを焼結して50nm以上の孔が無数に開いたマクロポーラス構造の透明な多孔質薄膜を得るというもの。新デバイス開発などへの利用が期待される。 スピンコート法は、原料溶液を基板上に滴下し、その基板を高速回転させることで溶媒を揮発させ、薄膜を得る方法。この成膜法を使いこれまで困難だったマクロポーラス孔の多層化や連結性の制御を可能にした。 マクロポーラス孔の直径は、使う界面活性剤の分子量によってコントロールでき、空孔を孤立させることも連結させることも可能で、DNA(デオキシリボ核酸)やタンパク質などの巨大な生体分子が通過できる10nmを超える連結孔も作れるという。 マクロポーラス半導体酸化物薄膜の魅力は、半導体酸化物の電気特性とマクロポーラスオーダーの空間とを同時に利用できることだが、すでに同研究所はTOTO(株)と共同で、マクロポーラス半導体酸化物薄膜を電極にし、色素で標識した生体分子を空穴内に固定化した分子認識機能を持つ高感度センサーを作ることに成功している。 同研究所は、これまでに新技術で酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛などの典型的な半導体酸化物のマクロポーラス薄膜が作れることを確認している。 詳しくはこちら |  |
新技術で作った酸化チタンのマクロポーラス薄膜表面の走査型電子顕微鏡写真(提供:産業技術総合研究所) |
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