(国)産業技術総合研究所は4月2日、再生医療の細胞源として注目されているヒト間葉系幹細胞の分化する能力を簡便・迅速に評価する技術を、国立成育医療研究センター、東京都健康長寿医療センターと共同で開発したと発表した。再生医療への同幹細胞の応用を加速する成果という。
ヒト間葉系幹細胞は、身体を構成する細胞を新たに作り出す幹細胞の一種で、軟骨、骨、脂肪、心筋、神経などへ分化する能力がある。そのため再生医療の細胞源として期待されており、iPS細胞と同様に各種医療応用を目指して臨床試験が進められている。
ヒト間葉系幹細胞による再生医療では、ヒトから採取した間葉系幹細胞を体外で増殖・分化させて移植するが、ヒト間葉系幹細胞は不均一な細胞集団であり、その性質はドナー(細胞供出者)、培養条件、細胞継代数などで変化し、分化能力は治療効果に大きく影響すると考えられている。だが、これまで分化の能力を評価する方法がなかった。
研究グループは、細胞表面を覆っている糖鎖(糖がつながった一群の化合物)を迅速・高感度に解析できるレクチンマイクロアレイという装置をこの評価に適用し、評価技術の開発に成功した。
糖鎖に結合するタンパク質レクチンのヒト間葉系幹細胞との反応性を調べたところ、レクチンの仲間のうちの4種類のα2-6シアル酸結合性レクチンが、分化する能力の高いヒト間葉系幹細胞との反応性が高く、分化する能力が低い幹細胞との反応性は低いことがわかった。ヒト脂肪由来の間葉系幹細胞やヒト骨髄由来のもの、また軟骨組織由来軟骨細胞で、いずれも同様な反応性が認められた。
これらの結果から、ヒト間葉系幹細胞やヒト体性幹細胞などの分化する能力を、α2-6シアル酸結合性レクチンとの反応性で評価できることがわかった。
今回の成果をヒト間葉系幹細胞の製造過程における品質管理などに応用することにより、ヒト間葉系幹細胞を用いる再生医療の有効性の向上が期待されるとしている。一部のレクチンの蛍光標識体は、ヒト間葉系幹細胞の分化する能力を評価する試薬として1年以内に実用化される予定という。