(国)農業環境技術研究所は3月28日、過去30年間の世界の穀物収量データの解析結果を発表した。
これは、カナダのブリティシュ・コロンビア大学の研究者と協力して1981年から2010年までの30年間の世界各地の穀物収量の安定性を調べたもの。
技術の発展により世界の穀物の収量は年々増加する傾向にある。しかし、一方で気候変動により熱波や干ばつ、洪水などが世界的に増加すると予測され、収量の良い年と悪い年の差が拡大するのではないかと懸念されている。
こうしたことから、世界の穀物生産の安定化を図るためには、将来予測に加え過去の気候変動が収量にどのような影響を与えてきたかを解析しておく必要があるといわれている。
今回の解析は、30年間に収量の年々変動が増大した場合を「不安定化」、縮小した場合を「安定化」として主要穀物について分析を行っている。
それによると、コムギは収量が不安定化した面積の方が安定化した面積より大きく、不安定化した地域が世界の収穫面積の22%に達している。
ほかの主要穀物でも世界の収穫面積のうちコメで16%、トウモロコシで13%、ダイズで9%それぞれ収量が不安定化している。
収量が不安定化した地域には、アルゼンチン、オーストラリア、フランス、ウクライナなど穀物の主要輸出国が含まれており、中国、インドネシアなど近年輸入量が増大している国でも不安定化が見られるとしている。
また、気候による影響の分析では、収量の不安定化のうち28%から34%が気候変動によるものであることが分かったという。