(国)農研機構作物研究所(農研機構)をはじめとした7つの機関は3月31日、ムギ類の穂に付いている種子が収穫前に発芽する「穂発芽」に関する遺伝子を突き止めたと発表した。この遺伝子はオオムギ、コムギとも同じだった。研究グループはこの成果をもとに穂発芽しにくい品種作りを進めている。
農研機構と(国)農業生物資源研究所、香川大学、岡山大学、ドイツのライプニッツ植物遺伝学・作物研究所の研究グループは、日本で栽培されている穂発芽しやすいオオムギの品種「関東中生ゴールド」と、穂発芽しにくい品種「アズマムギ」のゲノム配列を解析し、穂発芽に関する遺伝子がリン酸化酵素を作る遺伝子であることを見出した。
この遺伝子から作られるリン酸化酵素は500個以上のアミノ酸で構成されているが、このうちのたった1個のアミノ酸の違いが穂発芽の程度に関係していることが分かった。穂発芽しやすい「関東中生ゴールド」は特定の場所のアミノ酸がアスパラギン(N)だったのに対し、穂発芽しにくい「アズマムギ」ではトレオニン(T)だった。
世界中のオオムギ274品種でこの遺伝子を調べたところ、収穫期に雨が多く降る東アジア地域で栽培されるオオムギ品種の多くは穂発芽しにくい遺伝子のタイプを持つことが分かったという。
一方、ホクレン農業協同組合連合会農業総合研究所と農業生物資源研、横浜市立大学・木原生物学研究所の研究グループは、コムギの穂発芽しやすい品種と穂発芽しにくい品種のゲノム配列を解析し、穂発芽に関するコムギの遺伝子が、オオムギと同じ遺伝子であることを突き止めた。
コムギでもたった1個のアミノ酸の違いが穂発芽の程度に関係していた。
これらの成果は穂発芽しにくい品種開発に生かされている。