スピントルク発振素子の周波数安定化回路を開発
―無線通信用次世代デバイスとしての実用化が前進
:産業技術総合研究所(2015年12月14日発表)

 (国)産業技術総合研究所は12月14日、無線通信用の次世代デバイスとして期待されているスピントルク発振素子の周波数を安定化させる回路を開発したと発表した。これにより超小型電圧制御型発振器としての実用化へ加速することが期待されるという。

 

■超小型の発振器作製が可能に

 

 スピントルク発振素子は、磁気抵抗膜を用いてマイクロ波を発振する電子デバイス。現在、携帯電話、無線LANなどマイクロ波を使う無線通信機器には、大きさ数百μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)の共振器と半導体素子とでできた発振器が使われている。

 それに対し、スピントルク発振素子は、大きさがナノメートルサイズ(1ナノメートルは10億分の1m)と極めて小さく、かつ共振器が要らないため、これを使えば今よりずっと小型の発振器を作ることが可能になる。

 しかし、スピントルク発振素子は、発振する周波数の安定性が低く、実用化までまだ達していない。

 産総研は、スピントルク発振素子の特性に合わせた「位相同期回路」と呼ばれる高い周波数の発振器信号を安定化させる電子回路を新たに開発、安定したマイクロ波発振を実現することに成功した。

 この位相同期回路の採用で周波数の安定性を示す指標の一つである「スペクトル線幅」を測定限界値(1Hz:ヘルツ)以下にまで低減できるようになったという。

 産総研は、「周波数安定性が飛躍的に向上した。今回の成果によりスピントルク発振素子の電圧制御型発振器としての実用化が加速すると期待される」という。

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