京都大学と物質・材料研究機構は12月14日、分解能の世界記録となる0.54μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)に相当する2光子量子干渉縞を実現したと発表した。緑内障の診断などに用いられている光干渉断層撮影技術(光コヒーレンストモグラフィー)の分解能の飛躍的な向上につながる成果で、将来緑内障や初期がんなどの早期診断が期待できるという。
■分解能の世界記録となる0.54μmを達成
光干渉断層撮影は、広帯域光源による光の干渉縞を利用して物質中での光の反射位置を検出し、物体内部の構造を画像化する手法。
眼科分野において、網膜などのさまざまな組織の診断に活用されているのをはじめ、肺や消化管の表層組織の断層撮影への応用や、早期がんの診断などに関する研究が進んでいる。
課題の一つは、例えば網膜の厚みを、より精密に測定することを可能にする、いわゆる深さ分解能の向上。広帯域の光源を用いると深さ分解能を高められる半面、光の波長ごとに光の進行速度が異なる群速度分散により分解能が逆に劣化するというジレンマがあり、これまで分解能は5μmから10μmに制限されていた。
研究グループは今回、非常に広い帯域を持つ量子もつれ光源を開発し、超高分解能を達成した。量子もつれ光は、2個の光子が特殊な相関を持って結びついている状態で、タンタル酸リチウムを素材に用い、安定した量子もつれ光を発生する素子を作製した。
あわせて、高安定高精度干渉計も開発、これらを用いて得られた超高分解能は、従来の光断層撮影の原理検証で記録されていた世界記録0.75μmを超えた。超高分解能が分散媒質(水)などによってほぼ影響受けないことも実証した。
今回の成果により、1μmを切る分解能を持つ量子光断層撮影装置の開発が期待されるとしている。