(国)物質・材料研究機構と米パデュー大学は12月16日、光の屈折率がゼロの新材料を実現できる可能性を初めて理論的に明らかにしたと発表した。金属と誘電体の薄膜を周期的に積層した人工材料「メタマテリアル」を理論的に解析、確認した。屈折率ゼロの物質中では形を曲げたりねじったりしても光を損失なしに伝えられるため、新しい光学素子や光集積回路など従来にない高機能光デバイスの実現につながると期待している。
■光を損失なく伝える能力で高機能光デバイスも
解明したのは物材機構・国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の石井智研究者とパデュー大のアフゲニー・ノルマノフ教授らの研究チーム。
真空中や物質中の電磁波の状態は理論的にマクスウェル方程式ですべて表現できることが分かっている。そこで研究チームは、金属と誘電体の周期的多層膜からなるハイパボリックメタル(HMN)と呼ばれるメタマテリアルを想定、電磁波の一種である光の状態がその物質中でどうなるかを、同方程式を解くことで解析した。
その結果、ある特定の周波数の光の屈折率がゼロになることが分かった。屈折率がゼロの物質中では、理論的に光の波長が無限に長くなるため、光はその物体の形状がどれほど曲がったりねじれたりしていても伝わることができる。
従来の光ファイバーや光導波路がある程度以上曲がると光が漏れてしまうという問題があったが、屈折率ゼロの物質を使えば損失なしに光を送れるという。さらに、ほかにも従来は存在しない光学的性質を持つ新材料の実現が期待できる。
HMNは自然界にはない光学材料を実現できる可能性があるためここ数年世界的に研究が活発化しているが、これまでは理論的な解を求めてその光学的性質を厳密に分析することは難しかった。