
「寒締め栽培」により、ホウレンソウの抗酸化能は増加する(品種「まほろば」)(提供:(国)農業・食品産業技術総合研究機構)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は12月14日、ビニールハウスで育てた後に冷たい外気にさらす「寒締め栽培」をするとホウレンソウが持つ抗酸化能(親水性酵素ラジカル吸収能、H-ORAC値)が高まると発表した。寒締め栽培でホウレンソウの食味が良くなることは知られていたが、今回の成果は、人の健康維持などに役立つ機能性野菜作りにも役立つのではないかと期待している。
■機能性野菜作りに寄与
農研機構の東北農業研究センターが3品種のホウレンソウ(「若草」、「朝霧」、「まほろば」)で確認した。
坑酸化能は人間の健康状態や病気に深く関係している体内のフリーラジカルや活性酸素を消し去る能力。このため抗酸化物質を含む食品が注目されている。
実験では、これらのホウレンソウをビニールハウスで出荷サイズに育てた後、冷たい外気にさらす寒締め処理をした。ホウレンソウの抗酸化能を「オーラック法」と呼ばれる代表的な測定法で調べたところ、寒締め処理をする前のホウレンソウに比べて1.9~2.5倍に増加していることが分かった。
そこで坑酸化能増加の理由を調べるため、ホウレンソウに10数種類含まれるフラボノイドと呼ばれる物質の量の変化を確認した。フラボノイドはポリフェノール化合物の一種であり、坑酸化能を持つものが多いことに注目した。その結果、寒締め処理を33日間した後のホウレンソウでは、処理前のものに比べフラボノイド量が2.2~2.6倍に増えていた。
このことから、研究グループは「寒締め栽培でホウレンソウの坑酸化能が増えるのはフラボノイドの増加によるという仕組みも明らかにできた」といっている。ただ、坑酸化能の強い食品を摂取することが人の健康維持に役立つかどうかについては、今のところまだ科学的根拠の蓄積が進められているとしている。