干ばつ下で葉の黄化を制御する遺伝子を発見
―「SNAC-As転写因子群」の関与を突き止め
:国際農林水産業研究センター/理化学研究所/東京大学(2015年12月14日発表)

 (国)国際農林水産業研究センターは12月14日、(国)理化学研究所、東京大学の研究者らと共同で、長期の乾燥による植物の葉の黄化を制御する遺伝子を発見したと発表した。この遺伝子を活用すると、干ばつ下での作物の黄化を改善する技術の開発が期待できるという。

 

■乾燥に強い作物の開発に向け一歩

 

 干ばつによる世界の農業生産被害を抑えるために干ばつに強い作物の開発が求められている。植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)は、乾燥ストレス時に葉に蓄積し、気孔を閉じて水分の蒸散を抑えたり、ストレス応答遺伝子の発現を促したりする役割をし、これらの生理応答を通じて植物はストレス耐性を獲得している。半面、ABAの効果が長時間に及ぶと、光合成に必須である葉緑素(クロロフィル)が分解され、葉の黄化が進行することが知られている。

 乾燥などの環境ストレスに強い作物の創出を目指している共同研究グループは、ABA応答に関わる遺伝子群の中から葉の黄化に関わる因子を見つけ出す研究に取り組んだ。

 着目したのは、植物に特異的な転写因子のひとつである「NAC遺伝子群」。その中で、ストレス応答に関わる7つのNAC遺伝子(SNAC-As)をすべて壊した変異体をつくり、ABAによってクロロフィルが分解されるメカニズムを詳細に解析した。その結果、「SNAC-As転写因子群」が、黄化に関わる遺伝子を調節してクロロフィルの分解を引き起こしていることを突き止めた。

 この研究成果は、乾燥ストレスによる黄化を制御し、作物の収量を増やすことに貢献することが期待されるという。

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