(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と東京大学は12月18日、太陽から吹き出すプラズマ(電気を帯びた希薄なガス)の流れである「太陽風」について、金星探査機「あかつき」(PLANET-C)を利用した観測で、太陽表面から太陽半径(約70万km)の約5倍離れた辺りから急激に加速していることが分かったと発表した。また、この加速には、太陽風の中を伝わる波をエネルギー源とする加熱がかかわっていることも明らかになったとしている。
■太陽風を通過して届く電波を解析
太陽風の変動は、オーロラや磁気嵐の原因ともなり、様々な影響をもたらす。太陽風の速度は地球軌道で秒速400~800kn(時速150万~300万km)にも達する。太陽風がこうした速度になるためには太陽表面から太陽半径の数倍から10倍程度離れた付近でもガスが加熱され、高温が保たれる必要があるが、その様子はこれまで観測できなかった。
今回の観測は、「あかつき」が地球から見て太陽のほぼ反対側を通過する平成23年6月6日から7月8日にかけて断続的に16回行われた。太陽観測衛星「ひので」による同時観測も行い、「あかつき」から電波を発射し、臼田宇宙空間観測所(長野・佐久市)で受信。太陽数を通過して地球に届くこの電波の変化を解析した。
それによると、太陽表面近くから太陽半径の約20倍離れた付近まで調べた結果、太陽風の速度は太陽近くでは秒速30~60kmなのに、太陽半径の5倍ほど離れた辺りで速度が急激に増し、秒速400kmに達していることを発見した。また、今回の観測で、この急激な加速原因は、太陽風内で発生した音波が衝撃波を発生、この衝撃波がプラズマを加熱し、太陽風を加速することを突き止めた。
この研究成果は米国の天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」の本年6月20日号と同12月10日号に掲載された。