トンネルトランジスタの長寿命を実証
―電界効果トランジスタの10万倍に
:産業技術総合研究所(2014年12月16日発表)

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トンネルトランジスタと電界効果トランジスタの長期寿命の比較(提供:(独)産業技術総合研究所)

 (独)産業技術総合研究所は12月16日、超低電圧で動作する省電力デバイスとして有望視されるトンネルトランジスタ(トンネルFET)が、従来の電界効果トランジスタ(MOSFET)に比べて10万倍以上長寿命であることを実証したと発表した。

 

■センサーネットワーク回路で半永久使用も

 

 大規模なセンサーネットワーク回路の駆動にトンネルFETを使った場合、無交換で半永久的な使用が可能であり、回路の設置や維持コストを大幅に削減できるという。

 社会の様々な分野に浸透し始めているワイヤレスセンサーネットワークは、今後大規模化の進行が予想されており、ネットワーク回路の要(かなめ)の一つであるセンサーは、省電力駆動が可能なトンネルFETへの置き換えが検討されている。

 産総研の研究チームはこの置き換え促進を目指して、今回トンネルFETの寿命を評価試験するとともに、回路の高性能化、低コスト化技術の開発を進めた。

 寿命試験では、ゲート電圧を1.5V加えた場合、従来のMOSFETが寿命千数百秒だったのに対し、トンネルFETは10年の寿命を認めた。これは1V以下の駆動電圧では100年以上の動作寿命を意味しており、無交換で半永久的に使用できる性能という。

 一方、大規模なセンサーネットワーク回路の駆動には、正型・負型2タイプのトンネルFETから成るCMOS(相補型金属酸化膜半導体)回路が必要となる。

 そこで研究チームは、両極性のトンネルFETを同一プラットフォーム上で一括作成するプロセス技術を開発、低コスト化と高性能化を可能にした。両極性のトンネルFETの高性能化は、CMOSの省電力化に直結する成果という。

 研究チームは今後、トンネルFETの性能をさらに高め、大規模センサーネットワーク用省電力デバイスの置き換えを目指したいとしている。

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