(独)産業技術総合研究所は12月16日、電子回路の立体化で高性能・低消費電力化を目指す積層型3次元集積回路の実現に有望な技術を開発したと発表した。立体化に必要な多結晶薄膜形成技術を開発、多結晶ゲルマニウムN型トランジスタの性能を約10倍に向上させて3次元集積回路の実現に道を拓いた。今後、既に高性能化されているP型とも組み合わせて集積回路を作り動作の実証を目指す。
■積層型3次元集積回路に道
集積回路はこれまでトランジスタの微細化によって高性能・低消費電力化が進んできたが、技術的・経済的にいま以上の微細化が難しくなってきている。このため微細化に頼らず回路を立体化することで高集積化を進め、高性能・低消費電力化を実現しようという3次元集積回路の開発が進んでいる。
今回開発した多結晶薄膜形成技術は、シリコン基板上に非晶質のゲルマニウム薄膜を堆積させた後、熱処理によって多結晶ゲルマニウム膜にする方法。産総研はこの技術を用いることで、初めてゲルマニウムN型トランジスタの性能指標である電流駆動力をこれまでの10倍に上げることに成功、単結晶シリコントランジスタに迫る高性能を実現した。
ゲルマニウムの多結晶薄膜は、多結晶シリコンに比べてより低温で作れ、熱的ダメージなしに集積回路の上に連続的に回路を積層し立体化できる。また、シリコンを使うよりゲルマニウムの方が高速・低電圧の動作も期待でき、3次元集積回路の有望な要素技術とされている。
ただ、これまでは集積回路に欠かせないN型とP型トランジスタのうち、多結晶ゲルマニウムでは十分な性能を持つN型が実現できなかった。特に電流駆動力は、シリコンを用いた通常のトランジスタに比べて10分の1以下だった。P型ではすでに単結晶シリコントランジスタに迫る性能が得られているため、今回の成果によって初めてゲルマニウムを用いて実用性能を持つ集積回路が作成できるという。
産総研は今後、多結晶ゲルマニウムによる3次元集積回路化の研究を進め、集積回路の大幅な小型化と高機能化、低消費電力化を目指す。