(独)国立科学博物館は12月19日、同館の研究員が参加した国際共同研究グループが、地球上の土壌菌類の多様性と分布様式を世界で初めて実測に基づいて明らかにしたと発表した。菌類はこれまで一般に150万種と言われてきたが、この推定は過大評価だった可能性があるという。
■菌類の推定総数150万種は過大評価
菌類はカビ、きのこ、酵母などの総称で、陸上生態系でもっとも多様な生物群の一つだが、菌糸や胞子といった肉眼ではほとんど確認できない微小な形態で過ごしていることが多いため、その存在を掌握するのは容易でなく、多様性や分布様式など分かっていないことが多い。
国際共同研究グループは今回、地球上の300地点以上から土壌サンプルを採取してDNA(デオキシリボ核酸)を抽出し、菌類のゲノムをパイロシーケンス法と呼ばれる方法で解析、気候帯ごとの種の構成や多様性の違い、菌類特有のパターンを調べた。
その結果、菌類の多様性は、動植物で見られるパターンと同様、赤道に近付くにつれて高くなること、熱帯に近付くほど種ごとの分布域が狭くなり、より固有性が高まることが分かった。
また、外生菌根菌は熱帯や寒帯では多様性が減少し、温帯でもっとも多様化していること、いくつかの高次分類群においては寒帯でもっとも多様化していることが認められた。これは、熱帯に近付くほど多様化するという生物の一般則と明らかに異なり、菌類固有のパターンであった。
さらに、菌類の多様性や分布様式を決める最大の要因は気候であり、次いで土壌環境や空間環境であること、植物の多様性との相関はあるものの、植物は菌類の多様性の直接の要因とはならないことが明らかになった。
菌類はこれまで地球上に150万種いると言われてきた。これはイギリスにおける植物と菌類の種数の比率が1:5であり、植物の種数は約30万種であるという数字をもとにつくられた推定値で、今回の調査の結果、この推定は過大評価であった可能性が浮上したという。