筑波大学は12月12日、大阪大学と共同で最も原始的な多細胞生物といわれる細胞性粘菌の一生の長さが体内に蓄積される脂肪で決まることを発見したと発表した。粘菌が持つ脂肪蓄積に関する遺伝子は人間にも共通しているため、人間が体内に蓄えた脂肪の消費を促進させる仕組みの解明や新薬の開発につながると期待している。
■脂肪蓄積が世代交代抑える
筑波大の桑山秀一准教授(生命環境系)の研究グループが、阪大の上田昌宏教授(大学院理学研究科)と共同で発見した。
細胞性粘菌は、形が定まらない単細胞アメーバとして増殖、栄養状態が悪くなると多くの細胞が集まってキノコのように胞子と柄からなる子実体を形成する。自然界で生き残るにはできるだけ早く増殖して単細胞としての一生を終え、飢餓状態に強い多細胞の子実体になって休眠状態に入る必要がある。
研究グループは、ヒトの細胞内への脂肪蓄積に関連する遺伝子「RabGAP」が細胞性粘菌にも存在することに注目、この遺伝子を壊したときの粘菌の変化を観察した。その結果、遺伝子が壊れて脂肪が蓄積しにくくなると粘菌の細胞増殖が早まり、飢餓状態に置かれたときの子実体の形成も早くなった。反対に遺伝子の働きを活発化させて脂肪が蓄積しやすくすると細胞増殖が抑えられ、子実体の形成も遅くなった。
このことは、脂肪をため込まずにエネルギーとして利用しやすくすることが細胞の活発な増殖を促して単細胞としての一生を早く終え、子実体の形成を早めていることを示している。細胞性粘菌にとっては世代交代が早く進められる有利な反応だという。
今回の成果について、研究グループは「脂肪の蓄積が細胞性粘菌の一生の長さを決める重要な因子であることを初めて示した」とみている。