細胞内タンパク質の特定部分の働きを評価
―新技術を開発、機能解析に力
:農業生物資源研究所

 (独)農業生物資源研究所(生物研)は12月11日、細胞内のタンパク質の特定部分の働きを詳しく評価できる新技術開発に成功したと発表した。これまでタンパク質全体としての働きを調べる方法はあったが、タンパク質を構成する各部分だけの働きを調べる方法はなかった。しかし今回、抗体の働き利用して各部分だけの働きを詳細に調べることができるようになった。この成果は今後、様々な細胞内タンパク質の働きの解明に役立つとみられている。

 

■抗体の分子認識機能に着眼

 

 細胞内のタンパク質は、それぞれ独自の働きをするために、特異的な構造をしたいくつかの部分でできている。これまではタンパク質の素となる遺伝子を欠損させることで、タンパク質全体としての働きぶりは調べられてきたが、細胞内タンパク質の各部分がどんな働きをしているかを個別に細かく調べることはできなかった。今回、生物研の研究グループは、抗体の優れた分子認識機能に目をつけ、新技術を案出した。
 研究グループは、抗体が特定のタンパク質に対してだけ結び付くという特質を利用、抗体全体ではなく、特定のタンパク質に結合する部分だけを細胞内に作り出し、これを特定部分に結合させることで、その部分がどんな働きをしているか調べられるようにした。
 こうした結合のために必要な部分だけにしてしまった抗体は「単一ドメイン抗体」と呼ばれ、そうでない通常の抗体より分子量が10分の1ほどなので、構造が簡単で使いやすい。
 生物研が今回開発した新技術は、標的タンパク質の特定の部分(ドメイン)をピンポイントに狙い撃ちできるので、個々のタンパク質のドメイン機能解析に大変有効で、副作用の少ない医薬品開発などに繫がると期待される。

詳しくはこちら