(独)産業技術総合研究所は12月11日、平面状のナノカーボン材料である多層グラフェンを用いて幅20nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の微細配線を作製、低抵抗、高信頼性を実証したと発表した。大規模集積回路(LSI)の微細化による電子情報機器の消費電力低減に貢献できそうだという。
■高い信頼性を確認
集積回路には現在、銅配線が用いられているが、微細化を進めると抵抗率の上昇や信頼性の低下が生じると指摘されている。グラフェン配線は低い抵抗率と高い信頼性を持つことから銅配線の代替として注目されているが、数十nm幅まで微細化しても特性が維持されるかどうかは不明だった。
研究チームは今回、多層グラフェンの層間に塩化鉄を入れる、いわゆるインターカレーションのプロセスを最適化することにより、抵抗率の低いマイクロメートル幅のグラフェン配線を作製、電子線リソグラフィーで幅20nmに細線化した。
試験の結果、この微細配線の抵抗値は細線化前の数μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)幅の値とほとんど変わらず、また、真空中250℃で10万A/cm2の電流を110時間以上流しても断線せず、160nm幅の銅配線よりも高い信頼性があることが確認されたという。
LSIの配線幅は2020年ころには10nm程度まで微細化されるとみられており、研究チームは今後、10nm以下でも性能を実証し、実用化したいとしている。