(独)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の果樹研究所は12月2日、ニホンナシの新種を2品種開発したと発表した。
一つは、気候の暖かい地方(暖地)向けで、「凛夏(りんか)」といい、もう一方は普通より遅く成熟する晩生の「甘太(かんた)」。
ニホンナシの早生(わせ)品種で最も広く栽培されているのは「幸水」。ニホンナシの全栽培面積の約40%を占めるが、この「幸水」に大きな問題が発生している。地球温暖化の影響を受け、暖地で花芽(実になる芽)が枯れる枯死(こし)が多発し、生産が不安定になっている問題で、「幸水」に代わる早生の新品種が求められていた。
その“ポスト「幸水」”を目指し開発されたのが「凛夏」で、暖地でも花芽が安定的に結実し、「幸水」とほぼ同じ時期に成熟する。得られる果実は、485gと大きく、「幸水」の381gを上回る。糖度は「幸水」とほぼ同程度=下の表上(提供:果樹研究所)。
同機構では、「果実品質良好で、特に暖地における普及が期待される」といっている。
一方、「甘太」は、高糖度で味が良く、栽培が容易な晩生の新品種。
晩生のニホンナシで最も広く栽培されている品種の名称は、「新高(にいたか)」と呼ばれ、ニホンナシの全栽培面積の約9%を占めている。しかし、「新高」は、早生の「幸水」などより硬い肉質で食感が劣るため、晩生で肉質の軟らかい新品種の登場が望まれている。
新品種「甘太」は、「新高」と同時期かやや遅い時期に収穫でき、得られる果実は「新高」より軟らかく、「幸水」以上の甘味を持ち、大きさも大きく571gと「凛夏」を上回る=下の表下(提供:同)。
同機構は、「晩生のニホンナシ需要を大きく拡大する品種として、南東北から西南暖地まで全国的な普及が期待される」とみている。
