ビタミンCの減少10分の1、変色5分の1に抑制
―品質低下を大幅に減らせる新殺菌技術を開発
:食品総合研究所

 (独)農業・食品産業総合研究機構(農研機構)の食品総合研究所は12月3日、果汁の殺菌時の品質劣化を大幅に低減出来る交流電界殺菌(HEF‐AC)法と呼ぶ新殺菌技術を開発、さらに同技術を用いた殺菌装置の商業規模へのスケールアップに成功、近く民間会社で同装置により処理した製品製造が始まると発表した。この殺菌法なら、従来の加熱だけの殺菌法と比べて、①ビタミンCの減少を10分の1、②熱による変色を約5分の1、③加熱臭の発生を約4分の1、などに抑えられるという。

 

■近く商品製造に使用開始

 

 これまでの加熱のみの殺菌では、熱に弱い食品素材の色・香りの劣化、栄養・機能成分の減少など抑えるのが難しいので、安全性を維持しつつ、より高い品質を達成できる食品殺菌法が求められていた。食品総研が生み出したHEF‐AC殺菌技術は、液体食品を電極で挟んで交流電界を掛けると、食品中を流れる電気で食品自体が発熱するとともに電気的な殺菌作用が生じ、この相乗効果で食品に混入した微生物を素早く効率的に殺菌できる。
 オレンジなどの果汁の好酸性耐熱菌の芽胞は、数十秒かけて110度程度まで温度を上げて30~60秒程度維持して殺菌するが、HEF-ACは、0.1秒で113度まで上げて、そのまま1秒間維持すれば殺菌できることが分かった。他の菌についても温度を適切に設定することで、2秒以内の殺菌ができた。
 この技術の実用化に向け、食品総研では平成15年度から同20年度まで民間2社と協力、この技術が果汁、茶・コーヒーのような飲料殺菌に幅広く使えることを実証し、さらに毎時2tの液状食品を殺菌できる装置で殺菌試験、製品品質検査など行い、食品製造に問題ないことを確認。さらに、実際の製造ラインを真似た連続運転試験、装置の耐久試験など行っていた。
 その結果、このHEF‐AC技術を用いた製品製造は可能と判断され、1時間当り最大5tの処理能力を持つ商業用装置を完成し、(株)ポッカサッポロフード&ビバレッジで近く実際の商品製造に使われることになった。HEF‐AC技術は殺菌だけでなく、酵素の失活にも優れた性能を発揮するので、利用範囲拡大が期待される。今後は果汁以外の様々な液体食品にも活用、高品質を得られる新しい食品加工技術として発展させたい、としている。

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HEF-AC処理および加熱処理がオレンジ果汁中の成分に与える影響(提供:食品総合研究所)